:
1

ファイオスとの決戦からしばらく後――

<HERO_NAME>によって滅びの運命を脱した世界は、しかし新たな異変に襲われていた。

突如として変容した空。そこから現れし謎の敵。そして――

アストラ島に現れた、正体不明の巨大な構造体。

島を襲う異変の解決のため――そして、機能不全に陥った飛行島とそれに伴うように意識不明へと陥ったバロンを救う手がかりをさぐるため――

アイリスたちは、謎の構造体の落下地点へと急ぐのであった。

アイリス :
アレが墜ちた場所は、この森の奥深くです。どんな危険がまっているかわからないけど――

がんばりましょう。

ダグラス :
ああ、そうだな。

シャルロット :
おう、絶対負けねーし。

ソアラ :
がってんです。そんじゃ――

古今東西ゲェーーーーム!!

シャルロット&キャトラ&ダグラス :
イェェェエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエ!!!!!!

ソアラ :
ぱんぱん! アーレ!

シャルロット :
どれ!!

ソアラ :
こいつぁ失礼をば……ぱんぱん! パーン!!

ダグラス :
どういうことだ!?

ソアラ :
最後のぱんはパンですぞ?

キャトラ :
オッケー! じゃあ続行ね!!

ぱんぱん! カニカマ!!

ダグラス :
ぱんぱん! シチュー!!

シャルロット :
ぱんぱん! ローストビーフ!!

アイリス :
ぱ、ぱんぱん! ハバネロパイ……

…………お題は……!?

ダグラス :
全員好きな食いもん言っただけみたいになってんじゃねぇか!

シャルロット :
しゃーねー、次はあたしに任せろ!

王様ゲーーーーーーム!!!

ソアラ&キャトラ&ダグラス :
イェェェエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエ!!!!!!

シャルロット :
はいみんな歩きながらくじ引いてーそんで見てー。

ソアラ&キャトラ&ダグラス :
見ましたぞ!見たわ!見たぜ!

アイリス :
見ましたけど……

シャルロット :
王様だーーーれだ!!

ソアラ :
朕じゃ。

アイリス :
皇帝!?

キャトラ :
くるしゅうない。

アイリス :
殿……!?

ダグラス :
全方向に一マスずつ動けるぜ!

アイリス :
王将……!!

シャルロット :
あたしにはこの服見えてるし。

アイリス :
裸のやつ……!?

シャルロット :
はいじゃーリス以外全員王様ねー。

アイリス :
(どういう王様ゲームなの!?)

キャトラ :
そんじゃ命令ね!せーーーの!!

シャルロット&キャトラ&ソアラ :
アイリスを笑わせろーーーー!!!

ダグラス :
任せろよ。女の子を笑顔にだって――<[AC0D0D]できちまう[FFFFFF]>ッッ!!!

アイリス :
え、えぇ!?

 :
2

ソアラ :
ほれほれ見てくださいっす!ナイスポーズっす!!

アイリス :
うん。ナイスポーズだね……

シャルロット :
いくぞトラ! せーの!!

キャトラ :
ゴージャイロ!!

シャルロット&キャトラ :
セイクリッドジャイロ<[AC0D0D]クルクルキャトランダー[FFFFFF]>!!

アイリス :
目回らない……?

ダグラス :
まだ笑わねえか……!?それなら索敵ついでに――そら! 肩車だ!!

アイリス :
きゃー!!?た、高いです!!

ダグラス :
高いトコなんざ飛行島で慣れっこだろー?

アイリス :
あ、あの……みなさんっ!!キャトラも!!きゅ、急にどうしたんですか?

シャルロット :
……えっとさ、さっきトラに頼まれたわけ。

ダグラス :
アイリスを楽しい気持ちにさせてあげてほしい、ってな。

アイリス :
え……?

キャトラ :
……だってアイリス、最近ずぅっとつらいコトばっかで……

立ち直ったみたいに見えても、ふっとつらそうな顔してて……

アイリス :
それは……

シャルロット :
そりゃーちっとは気持ちわかるけどさ……

でも、リスが暗いまんまとか、やっぱちょっと困るワケ。じゃないと安心して飛行島でグータラできないし!!

キャトラ :
こぉーーー!!

ダグラス :
ごめんな、無理やりで。でもさ。

以前の……<[AC0D0D]瘴気[FFFFFF]>に侵されて、死の不安に押しつぶされそうになってた頃のオレも――

仲間やクラスメート……周りの奴らの明るさとか、優しさとか、真っ直ぐさにすっげぇ救われたんだ。

もちろん、おまえにも。

ソアラ :
……もうここ最近、世界の危機のバーゲンセールで、余裕なんてカラッキシですけど……

でもなんちゅーか。あたしはやっぱり――

――冒険は、楽しくワイワイにぎやかにいきたいっす!

キャトラ :
そりゃあの新しい敵はなんか強いし、油断なんてしちゃだめだけれども……!!

だけど――カイルや<HERO_NAME>を取り戻すための冒険が、ただつらくて痛いだけなんて――

アイリスがつらいのは……イヤだもん。

アイリス :
…………

シャルロット :
ちょ、ちょっと強引だったのは悪いっていうか……でも悪気ないってーか……

ソアラ :
無理はせんでくださいな。アレでしたらあたしたちだけで調べにいっても――

アイリス :
な……なんでやねんっっ!!

なんでやねん!なんでやねん……!!

キャトラ :
なにがっ!?

アイリス :
えっ!? えぇと……一回目が古今東西ゲームのときにお題がなかった分のつっこみで、二回目が王様ゲームの……!

シャルロット :
ぶはは! おっせ!!

ダグラス :
……くくっ。今さらすぎるだろツッコミ。伝わらねえって。

ソアラ :
おっしゃーー!!追いつかれないようがんがんボケていくぜぁー!!

アイリス :
ありがとう、キャトラ。みんなも。

だよね。冒険はにぎやかで、楽しくて、知らない事だらけで――

悲しい顔していたら、あの人に怒られちゃうね。

キャトラ :
……っ! そうよ!!もうアイリスったら!!ばかばかばかばかばかーー!!

 :
3

ウッホ :
ウッホーーー!!!

ソアラ :
ほげーーーー!!!

ダグラス :
ソアラ、大丈夫か!?

ソアラ :
ウッホビームを受けちまいました。一刻も早くやっつけないとウッホになってしまウッホ。

ダグラス :
もうなりかけてんじゃねえか!

アイリス :
い、急いでやっつけないとー!

ソアラ :
ウホっす。

キャトラ :
ホッ……

シャルロット :
ウッホ、ビーム撃たないしな。

ダグラス :
そらァァアア!!!

ソアラ :
おひょー!一気にズンバラリンだー!

アイリス :
凄い――私たちよりずっと<[AC0D0D]EMETH[FFFFFF]>の力を使いこなしてます……!

シャルロット :
どんな秘密特訓したワケ?おしえろよー!

ダグラス :
まずは朝五時に起きて体操とランニングだろー?食事は穀物と野菜を中心に、油や塩分を控えた一汁一菜で……

シャルロット :
ただの健康生活じゃねーか!そんな食生活ヤダーー!!

アイリス :
なるほど……!キャトラ、今日からご飯はお野菜中心でいこうね。

キャトラ :
ぎにゃーーー!!アイリスのいじわるー!!

ダグラス :
オレのダウンをきっかけに、姉ちゃん、献立にすげえ気遣うようになっちまってな……

キャトラ :
お弁当タイムよーーーー!!!

シャルロット&ダグラス :
きたーーーーーー!!!よっしゃあ!!!

ソアラ :
キェーウォホーーー!!!

アイリス :
大丈夫?本当にウッホになってない……?

シャルロット :
隙あり!!リスのパイ一口もーらいー♪

アイリス :
あ、それは――

シャルロット :
うぎゃーーーーー!?かっらーーーーーい!?

キャトラ :
……アイリス用のハバネロパイだったわね。

シャルロット :
からいからいからひ~~~!!口から火~~~出る~~~~!!!

ソアラ :
おっとっと!そいではその火であたしのパイをさっと炙りましてと……

キャトラ :
ほんとに出ちゃいないわよ。アイリス、お水~。

アイリス :
い、今……ってきゃーー!?すみません、こぼしちゃいました……!

シャルロット :
詰んだーーー!!!

ダグラス :
ったく、オレのやるよ。ゆっくり飲めよー。

シャルロット :
うぇ~~~~ん……

 :
そして――

シャルロット :
うっし。よーやく――

ソアラ :
到着しましたな!!

ダグラス :
こうして見るとでけえな。こいつが……

キャトラ :
アストラ島の異変の、原因……

 :
4

ダグラス :
こうして見るとでけえな。こいつが……

キャトラ :
アストラ島の異変の、原因……

アイリス :
――――

シャルロット :
こんなでっかいの、どこから出てきたってワケ……?

ソアラ :
あっこからしか考えられねっすよね。今のトコ。

キャトラ :
ほんとになんなのよアレ……<[AC0D0D]零世界[FFFFFF]>……でもないのよね?たぶん……

ダグラス :
ボンヤリしちゃいるが――<[AC0D0D]向こう側[FFFFFF]>に垣間見える[景:・][色:・]みてぇなモンも気になる。あんなの――

アイリス :
はい。まるで――――空の向こう側に、[も:・][う:・][一:・][つ:・][の:・][世:・][界:・][が:・][あ:・][る:・][よ:・][う:・][な:・]――

シャルロット :
じゃあ、この空の上にはさ……

わけわかんねー魔物降らしたり、こんなデッカいもん落っことしてくる危ないヤツがいるってワケ……?

ダグラス :
危ないヤツって――どこの何者だっていうんだよ?

アイリス :
……7つの<[AC0D0D]大いなるルーン[FFFFFF]>が世界から失われ、さらには<[AC0D0D]均衡[FFFFFF]>の片割れである<HERO_NAME>が不在となったことで――

この世界はいま……とても不安定な状態です。

ソアラ :
実際、世界中でルーンの力がちょっとずつ弱まり始めてるっちゅー話ですしな……

ダグラス :
ソウルの減衰もそうだ。草木や作物がすぐ枯れちまうって、姉ちゃんも言ってたよ……

アイリス :
抽象的な表現だけれど……この世界は今、[綻:・][ん:・][で:・][い:・][る:・]――んだと思います。

これまで私たちが知らなかったもう一人のエレノアたちの世界や、あの<[AC0D0D]零世界[FFFFFF]>のように――

これまでの私たちでは、知覚すらしえなかったモノ――

一度壊れてあやふやになってしまった世界が、ふと――そんな<[AC0D0D]何か[FFFFFF]>と繋がってしまったとしたら……

ダグラス :
……その<[AC0D0D]何か[FFFFFF]>が、空の上の<[AC0D0D]アレ[FFFFFF]>ってわけか?

アイリス :
……すみません。ただの推測で、確証はないんですけど……

キャトラ :
ちょっとフムニールっぽかった。

シャルロット :
なあみんな、ちょい。

……よく見たらさ。ここらの樹ぜんぶ――

――枯れてる。

ソアラ :
ありゃ、ほんとです。燃えちまったとかでもなさそうっすね。

ダグラス :
土も同じだ。ここら一帯、砂漠みてえに干からびてる。

キャトラ :
なにこれ、まるで……

このでっかいやつが、島の生命を吸い取ってるみたいな……

アイリス :
…………

(――嫌な<[AC0D0D]力[FFFFFF]>を感じる)

(当時の<[AC0D0D]闇の王[FFFFFF]>とも、<[AC0D0D]破壊[FFFFFF]>ともつかない得体のしれない何か……)

ソアラ :
ほげーー!?何事ですかえ!?

シャルロット :
なんか光ってるし!?いったいなんだっつーの!!

ダグラス :
みんな、気をつけろ――

来るぞ!!

 :
5

異様な魔物 :
――――――――――!!!!!!

シャルロット :
はぁ、はぁ……!!くっそ、なんて数だよ……!!

キャトラ :
ただでさえ一匹一匹が強いのに、いきなりこんな来たら……!!

ダグラス :
いったん退くぞ!!みんな先に行け!!

ソアラ :
どこに逃げてもうじゃうじゃ出てくるっす!!こいつぁもしかして――

ダグラス :
ああ。<[AC0D0D]奴[FFFFFF]>が言ってんだろうさ……

絶対に逃がさねえ、って。

キャトラ :
でも、どうして急にこんな……!!

アイリス :
もしかして、私の――<[AC0D0D]光の王[FFFFFF]>の権能に反応して……?

ソアラ :
アイリスさん!!タラレバは後っす!

シャルロット :
こんなん誰も予想できねーし!いいからずらかんぞ!!

異様な魔物 :
――――――――――!!!!!!

シャルロット&ソアラ :
きゃああああああ!?

アイリス :
シャルさん!!ソアラちゃん!!

ダグラス :
てめぇ――!!

……来いよてめえら。どうせなら野郎が一番食い出があんだろ?

こっちだ!!全員まとめてかかってきやがれ!!

キャトラ :
おばか!!カッコつけてる場合じゃないでしょーが!!

ダグラス :
この数じゃどのみち逃げ切れねえ!オレはどうにかなるから先に行け!!

ソアラ :
ダメっすダグラスさん!無茶です!!

アイリス :
この――!!

……っ。キリが……!!

シャルロット :
あーもーうざってーー!!道あけやがれこんにゃろー!!

ソアラ :
勇者をなめんなパーーーーンチ!!

異様な魔物 :
――――――――――!!!!!!

シャルロット&キャトラ&ソアラ :
このやろ……!!ぎにゃーーーー!?ほげーーーー!!

アイリス :
あ……シャルさん!!ソアラちゃん!!キャトラ!!!

ダグラス :
まずい……!!助けねえと――

アイリス :
―――!!

ダグラス :
上等だ……

まとめて叩き潰してやるぜ……!!

 :
6

アイリス :
はぁ、はぁ、はぁ……

ダグラス :
クソ! 無尽蔵かよ……!!アイリス、ケガは!?

アイリス :
かすり傷です……でも……

キャトラも、シャルさんも、ソアラちゃんも……

ダグラス :
(ちくしょう……あいつら取り戻すどころか押し込まれる一方だ――)

(――どうする。どうする!?)

アイリス :
構造体が……

――――

ダグラス :
なんだ、この圧力は……!?

アイリス :
莫大な力が……ほとばしってる……

まるで……燃え盛る太陽のような……!

!?どんどん亀裂が広がっていく――

ダグラス :
……おいおいおい。もしもあんな力が炸裂したら――

こんな小さな島、跡形も失くなっちまうぞ……!!

アイリス :
…………

 :
(このままじゃ、キャトラも、シャルさんも、ダグラスさんもソアラちゃんも……)

(ううん、それだけじゃない――)

(<HERO_NAME>が大切にしていた場所が……大切な人たちの生命が……失われてしまう……)

(……こんなとき……)

(こんなとき――<HERO_NAME>がいてくれたら――)

アイリス :
――――

――ちがう――

ダグラス :
……アイリス?

アイリス :
(私がいますべきことは、膝をつくことじゃない)

(彼が守ったこの世界を――この場所を、みんなを――)

(最後まで守り抜くことだ)

ダグラス :
アイリス!!

アイリス :
私がどうにかします!ダグラスさんは飛行島に避難――

ダグラス :
おい。

……それは違うだろうが。

それともそんなにオレが頼りねえかよ?

アイリス :
……お願いです。ダグラスさん。

私と一緒に……戦ってください。

ダグラス :
当たり前だ。いくぞ!!

 :
7

ダグラス :
ったく、大盤振る舞いだな……!!

アイリス :
はぁ、はぁ……急ぎましょう……あの構造体のもとへ……!

ダグラス :
具体的な策はあるのか!?

アイリス :
アレを初めて目にした時も、それにさっきも――まるで私と共鳴するような、不可思議な感覚がありました。

もしもいま起きている事態を――あの<[AC0D0D]何か[FFFFFF]>が、<[AC0D0D][光:わ][の:た][王:し][FFFFFF]>の力を警戒し、遠ざけるために引き起こしてると仮定したら――

私の存在を、<[AC0D0D]脅威[FFFFFF]>として認識しているとしたら――私の力で対処できるかもしれない。

ダグラス :
でも、<[AC0D0D]光の王[FFFFFF]>の力だってだいぶ弱まっちまってるんだろ?

アイリス :
はい。でも……このまま指をくわえて見ているだけなんて――!

ダグラス :
……ま、やるしかねえか。あのデカブツさえどうにかすりゃ、敵の増殖も止められるかもな。

アイリス :
ごめんなさい、ダグラスさん。根拠のない作戦に付き合わせてしまって……

ダグラス :
そんな顔で頼まれたらよ――やる気になるしかねぇだろ……!!

(ソアラ、キャトラ、シャル――無事でいてくれ、頼む……!)

はぁ、はぁ、はぁ――

アイリスッ!!

アイリス :
あ……ダグラスさん!!

ダグラス :
ぐ……構うなッ!!進むぞ!!

アイリス :
でもそのケガじゃ……!!

アイリス&ダグラス :
……っ!!

ダグラス :
がはッ……!!!

カティア :
この馬鹿!!まともな休憩も無しでぶっ続けでやってりゃそうなるに決まってるでしょ!?

ダグラス :
この、えめす? ってヤツが完成すりゃ、みんなが今よりずっと安全に戦えるようになるんだろ?なら、オレが気張らねえとさ……

カティア :
……私がアンタのテスター志願を受け入れたのは、以前みたいに戦えなくなったアンタへの同情でもそういうお綺麗な自己犠牲に酔わせるためでもないわ。

肩で風切って前線に立つだけが<[AC0D0D]戦い[FFFFFF]>じゃないってことを教育してあげるためなの!

ダグラス :
わかってるよ。感謝してる。だからこうやって、裏方の実験台でカラダ張ってるんだろ?

カティア :
微塵もわかってないわよ!!せっかく治った身体痛めつけて!ろくに休みも――

ダグラス :
……できなかったんだよ。

カティア :
は?

ダグラス :
ファイオスとの戦いのとき、オズマやみんなを守ることも――

オレたちのために自分をなげうった<HERO_NAME>の力になってやることも――

<[AC0D0D]できなかった[FFFFFF]>んだ……

――だから、今度こそは――

ウォォォォォオオオオオオオ!!!

アイリス :
ダグラスさん……もう退避してください!!

ダグラス :
はぁ、はぁ……やなこった……

アイリス :
私を庇いながらじゃ……もうもたない……!!

ダグラス :
(……くそ……身体が、もう……)

(オレは――)

(また、何も――)

??? :
焔よ――!!!あたっちょぁーーー!!!

アイリス&ダグラス :
……え?

キャトラ :
ふたりとも、遅れてゴメン!!

??? :
あたしの肌にさんざん傷つけてくれやがって……覚悟しろよてめーら……

ぁおまたせいたしトゥー!!世界を照らす勇者が相手ダー!!よってたかって――

シャルロット&ソアラ :
かかってこぉぉぉぉぉぉいッ!!!

 :
8

シャルロット :
……あんさー。

ソアラ :
クエスチョン。

シャルロット :
あのさー。……あたしらって、もうちょい真面目モードになった方がいいカンジなんかなー?

ソアラ :
はて、そのハートは?

シャルロット :
世界とかめちゃくちゃんなって。<HERO_NAME>いなくて。飛行島とかバロンもやばくって。リスもトラもへこんでて。

なんか空気読めてないかなって。

ソアラ :
…………

普段どおりでよいのではなかろでしょか?

そりゃあたしだって、近ごろは人並みの無力感など感じとりますけれども。

泣いてヘコんで神妙にして、そんで<HERO_NAME>さんが戻って来るならとっくにそうしてますし。

シャルロット :
……うん。

ソアラ :
あたしが引きこもってたころも、外でるようになって、そんでいろいろ悩んでたときも――

まわりの人たちの<[AC0D0D]なにげなさ[FFFFFF]>に――

なんというか、あたし、いろいろ救われまして。

シャルロット :
なにげなさ、ねぇ。

ソアラ :
はいっす。なんで、あたしも<[AC0D0D]いつでもどこでもなにげない[FFFFFF]>をモットーに!!

せめて隣人の心をピカッと明るく照らしてあげられれば、ひとまずは勇者冥利に尽きるっすな!

シャルロット :
…………

ソアラ :
マでもあたしの意見なので。あんまり気にする必要ねっすね。

シャルロット :
いや、マジそれなって。

そーだよなー。まわりがなんかシリアスだからってさー。合わせてたらこっちがしんどいし。

あたしはあたし!!モットーはスローライフ!!毎日好きなだけ寝て!!ビーフ食ってスイーツ食いたい!!文句あっか!?

ソアラ :
ナッシンヌゥー。

シャルロット :
――でも<HERO_NAME>連れ戻して世界もなんとかすんのだけは一応ガチ!!

だってまだ世界中の美味いもん食い足りないし、飛行島なきゃ移動とかめんどい!!文句あっかぁ!!!

ソアラ :
ヌッシンナァー。

シャルロット :
おし! んじゃあたしらはまわりがどうだろーと今まで通り――

ソアラ :
ほいっす。マイペースでがんばりましょ。

どきゃばきどりばりーーーん!!勇者の拳をくらえーーい!!

シャルロット :
くのくのくのくの!!治療代払えこらぁぁーー!!!

アイリス :
シャルさん、ソアラちゃん……

キャトラ :
ただいま~。

アイリス :
……キャトラ……!!

ダグラス :
無事……だったんだな……

キャトラ :
どうにかね……アンタのおたけびがかろうじて聴こえて、急いでこっち来たの。アタシのおてがら~♪

シャルロット :
だぁーー!!バケモンの分際で人様食おうとすんなコンニャローー!!

ソアラ :
いま助けますぜ!!扁桃腺五段突きじゃーーー!!!

シャルロット :
どこ突いてんだよそれ!!

ダグラス :
……ふたりとも、よく見りゃ傷だらけじゃねえか……

ソアラ :
あああ……!!!

シャルロット :
どうした!!?

ソアラ :
突き指しました。

シャルロット :
リスー!! たすけてーー!!

アイリス :
――はいっ!!

ダグラス :
――――

 :
9

ソアラ :
はひはひ……

シャルロット :
斬っても斬ってもわいてきやがってコンニャロ……!

アイリス :
(まだ敵の増殖速度の方が早い……このままじゃ――)

(……間に合わない!!)

キャトラ :
みんな……!!

ダグラス :
…………

カティア :
ただ、<[AC0D0D][EMETH:それ][FFFFFF]>はあくまで戦闘補助のためのシステム。

中枢部分はブラックボックス[塗:まみ]れ。かつ特殊なアンタの身体にあわせてチューニングしてある分、造りも繊細になってる。

――酷使すれば、どんな問題が起きるかわからないわ。

ダグラス :
……悪い、キャトラ。ちょっと離れててくれ。

キャトラ :
……ダグラス?なにを――

ダグラス :
――ウォォォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ……!!!

キャトラ :
!?ちょっと、無理しちゃだめ!アンタが一番ボロボロじゃん!

ダグラス :
あいつらが……必死で戦ってんのに――

こんくらいで――へこたれてる場合じゃねえだろ……!!

……ッ!?ぐぁあぁああああ……!!

ソアラ :
ダグラスさん!?なにしてんすか!!

シャルロット :
なんか燃えてんぞ!!

アイリス :
増幅されたソウルが体内で暴走してる……!?

キャトラ :
だめダグラス!!まるこげになっちゃう!!

ダグラス :
……あいにく……だがなぁ……!

[肉:・][体:・][す:・][ら:・][蝕:・][む:・][力:・][の:・][扱:・][い:・]に関しちゃ――ベテランなんだよ!!

(もう後悔してたまるか――取りこぼしてたまるか――)

<HERO_NAME>を救い出すための未来を――奪われてたまるか!!

オレは――オレは魔剣士――

―――魔剣士ダグラスだッッ!!!

ガァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッッッ!!!!!

だぁから……ホラ。いつも言ってんだろ?

<[AC0D0D]できちまう[FFFFFF]>――ってな。

キャトラ :
し、心配させんじゃないわよこのばかーーーー!!!

シャルロット :
おっしゃ、逆転してくぞ!!さっさとあのデカいのなんとかした後は――

ソアラ :
バロンさんも飛行島もどうにかして<HERO_NAME>さん取り戻さねーとっすな!!行くぜ行くぜあちょらーー!!

ダグラス :
ああ、全力だ!!いこうぜ、みんな!!

アイリス :
(……大丈夫。まだまだ戦える。だって――)

(こんなにも――<HERO_NAME>を想う仲間が私のそばにいてくれる)

キャトラ :
……アイリス!!

アイリス :
うん、キャトラ――

(絶対に諦めない。この世界を守ると。カイルさんを救うと……)

<HERO_NAME>にもう一度逢いにいくと――この剣に誓ったから!!

 :
10

シャルロット :
はぁ、はぁ……!よぉーやく……!!

ソアラ :
もう膝ガックガクですが本丸に到着ダーー!!

キャトラ :
ぎにゃーー! なんかもう今にも爆発しちゃいそうだけど!?

アイリス :
早くしないと……!!

ダグラス :
しつけえんだよ、くそが……!!

異様な魔物 :
――――――――――――!!!!

??? :
[去:い]ね――!!!

影に飲まれろ――

シュガー :
キャハハハハハハハァ!!つぶれた溶けたドロドロドロ!!

シャルロット :
リア!?

イリア :
構造体の異常と敵の増殖を確認した。念のため救援にきたが……

ソアラ :
おろ?したらば飛行島の守りは?

シュガー :
それならばご安心をば。なぜなら私めは双子の弟……

[無辜:むこ]なる子どもたちは我が兄がしっかりと守っておりますとも。

キャトラ :
ウソね。アンタ分身できるもん。でもアリガト!!

ダグラス :
助かった!さっさとあのデカブツをどうにかしねぇと!!

アイリス :
全力を尽くします……!<[AC0D0D]*×○■!&%$…………[FFFFFF]>

(お願い――止まって!!)

ダグラス&キャトラ&ソアラ :
アイリス!?

アイリス :
(動けない……!!力が……奪われてる……!?)

シャルロット :
リスを――放しやがれェ!!

キャトラ :
アイリス! 大丈夫!?

アイリス :
(駄目だ……止めるどころか、今の私の力なんて一方的に飲まれるだけ――)

(<[AC0D0D]コレ[FFFFFF]>は――いったいなんなの!?)

ソアラ :
……卵……?

シュガー :
嗚呼それは言いえて妙。ねえねえお塩ふって食べてい~い?おかあさぁ~~ん!!

ダグラス :
――オレがどうにかしてみる!!おまえらは全員、飛行島まで全速で退避しろ!!

イリア :
私も手を貸したいが――

この膨大な力のほとばしり――もう猶予はなさそうだぞ……!!

アイリス :
(このままじゃ<HERO_NAME>の大切な場所が――)

(みんなが――!)

え……?ルーンドライバーが――

ヘレナ :
……みんな……

バロン :
――ね、ば――

――守ら――ね、ば――

ヘレナ :
バロン……さん……?

バロン :
――それが――

私の――<[AC0D0D]役割[FFFFFF]>――!!

アイリス :
あれ、は……

キャトラ :
―――飛行島!?

 :
11

アイリス :
あれ、は……

キャトラ :
―――飛行島!?

シャルロット :
でも、飛行島はもうまともに飛べなくなってたはずだろ!?

ソアラ :
んですが元気に飛んどりますぞ!?

ダグラス :
こっちに向かって……?いや――

キャトラ :
あのでっかいの目掛けていってる……!?

アイリス :
まずい、もう……

――[爆:・][ぜ:・][る:・]!!

イリア :
皆、伏せろッッ!!

ダグラス :
おまえら! オレの後ろだ!!

シュガー :
おぉっとこれは!?皆のピンチに、私めの従兄弟に再従兄弟にひいおじいちゃん!隣のお家のお兄さんまで駆けつけてくれたよぉ!!

アイリス :
キャトラ……!!

キャトラ :
アイリス……!!

 :
……………………

…………

……

シャルロット&ソアラ :
……っ……

ダグラス :
――? あれ……

キャトラ :
なんとも、ない……

アイリス :
――!? あれは――

シャルロット :
な……!? 飛行島が――

キャトラ :
でっかいヤツの力を……吸い込んでる……?

ヘレナ :
……何が起きて……

バロン :
――――

ヘレナ :
バロンさん……あなたなの……?

 :
得体の知れない、しかし、[莫大:ばくだい]なる<[FF9600]力[FFFFFF]>を一身に受けた飛行島が――

[鎌首:かまくび]をもたげるようにして、その巨体を揺るがしながら――

――今はもう変貌してしまった、はるか空の彼方を睨む。

そして――

一同 :
―――――――――――!!!!!

 :
……………………

…………

……

ダグラス :
……つぅ……!みんな、大丈夫か……!?

イリア :
ああ、どうにか……

ソアラ :
尾てい骨がアイタタタ……

シャルロット :
くっそ……何が起きて……トラ、リス、平気か……?

キャトラ :
――――

シャルロット :
おい、無事ならなんか――

アイリス :
――――

 :
12

アイリス :
――――

ソアラ :
ほげぇぇ……

シャルロット :
……すげぇ……

キャトラ :
空を覆ってたモヤモヤが晴れて――

ダグラス :
ああ。ハナからぼんやり見えちゃいたが――

もう疑いようなんかねえ。アレはどう見ても――

アイリス :
……はい。この空の上には――

[も:・][う:・][一:・][つ:・][の:・][世:・][界:・][が:・][あ:・][る:・]――!

ソアラ :
もうひとつの……

シャルロット :
……世界……

キャトラ :
あ、ルーンドライバーが……!

シャルロット :
ルンドラの光が……空の上の世界に向かってる……?

ソアラ :
……ルーンドライバーって、これから進むべき道を指してくれるんですよね?

アイリス :
……うん。この光はいつでも、私たちの行く先を導いてくれた。

ダグラス :
なら次の目的地は、あの空の向こう側ってことか。

キャトラ :
空の向こう側……また途方もないわねぇ……

アイリス :
――いこう。

シャルロット&ダグラス&ソアラ :
!!

アイリス :
どんな困難がまっていても。どんな痛みがまっていても。

この世界のために。人々のために。カイルさんのために。

<HERO_NAME>と、もう一度逢うために――

 :
かくして、次の旅路は間もなく始まる。

[茫漠:ぼうばく]と広がり、世界を包む[碧天:へきてん]すらも越えて――

再び出逢うための、新たなる旅路が――

13

かくして世界は繋がった。

アイリスたちは次の旅路への期待を燃やし――

同時に、未だ見ぬ未来への不安をつのらせる。

なぜなら未知とは希望であり、同時に脅威でもあるから。

??? :
それらは表裏一体で、決して切り離せない。

 :
――――

だから――

近い未来アイリスたちを待ち受ける<[FF9600]それら[FFFFFF]>との邂逅もまた、必然だったに違いない。

追い求める<[FF9600]希望[FFFFFF]>が大きければ大きいほど――

行き当たる<[FF9600]脅威[FFFFFF]>もまた強大なものとなるから。

そう。それは[互:・][い:・]にとって同様なのだ。

これから待つ出会いが、結束の灯火となるのか――

それとも。闘争の火種となるのか。

今はまだ、誰も知らない。