:
1

闇の道化師エピタフとの戦いは終わった。

だが、戦禍の中、世界は<[FF9600]零の汚泥[FFFFFF]>に飲まれ——

——その混乱の中、人々の間で多くの争いが起きた。

飛行島に集結した冒険家たちの力により、世界は再生を果たしたが——

七つの大いなるルーンと——

——闇の王が消失してしまった。

そして、今もまだ——

——世界の混乱は収まっていない。

サイファー :
皇帝陛下の護衛か?

ジュダ :
……一介の護衛に話しかけてくる余裕はあるのか?聖王家代表殿。

サイファー :
こういうお偉いさんの集まりは苦手だからな。一介の護衛と話してるほうが楽でいい。

ジュダ :
…………

サイファー :
しっかし、皇帝まで今回の話に乗っかってくるとは意外だな。

ジュダ :
そちらが休戦協定案をのんだからな。

サイファー :
文句たれてる連中は多いけどな……大変だったぜ、まとめるのも。

ジュダ :
<[AC0D0D]世界議会[FFFFFF]>……貴様はうまく行くと思っているか?

サイファー :
それをうまくまとめるのがお前や俺の仕事だろ?

議長 :
皆様、[静粛:せいしゅく]にお願いします。第一回世界議会を開会する前に[発起人:ほっきにん]である法王[猊下:げいか]よりお言葉をいただきます。

オズマ :
——世界は危機に[瀕:ひん]しています。

今までも問題は[山積:さんせき]していました。大国同士の争いは終わらず、魔物による被害も多かった。

だが、今はそれどころではない。ここにいる皆様もご存知のとおりこの世界は一度、消失しています。

それによって生じた混乱、[災禍:さいか]、戦争。世界が再生しても、終わらずに続いています。

ルーンの光は弱まり、魔物は以前よりも凶暴化し、人心は乱れている。

今こそ、我らは手を取り合い、この危機に対処すべきなのです。

争っていた大国同士が停戦し、こうして世界議会で席を同じくしています。

希望を示してくれました。白の法王として感謝いたします。

皇帝 :
…………

オズマ :
国の垣根を越え、共にこの難局を乗り越えましょう。

それが世界議会の目的です。

世界の全てに白の加護を——

議長 :
それでは第一回世界議会を開会いたします。

オズマ :
話が進まねぇな……

バイパー :
初日から弱音か?

オズマ :
そうじゃねぇよ。そうじゃねぇけど、愚痴くらいは言わせてくれって。

お偉いさんがたの足並みが全然揃わん。

ジョニー :
ま、各国の思惑が絡んでいますからね。皆様、自国の利益を最優先するでしょうし……

バイパー :
帝国と連邦が戦争をしていないだけマシだ。

オズマ :
こっちは仲違いしてるが、そっちの協力関係はどうなんだ?

バイパー :
各諜報機関や特務機関の足並みは揃っている。

ジョニー :
もともとレディ・キラーと旧アテル・ラナは協力関係にありましたし……

バイパー :
フルーツ忍者と昆虫忍者との雇用契約も引き続き継続している。

連邦の<[AC0D0D][V.O.X:ヴォックス][FFFFFF]>と帝国の狩猟戦旗も形式上は協定を結んだ。

オズマ :
実際、やりあってた裏の連中のほうが連携は取れてるってことか。皮肉だな……

ジョニー :
現場の危機感は違いますからね。それに対エピタフ戦線の時は非公式ですが協力関係にありましたし……

バイパー :
だが、元は敵対組織だ。監視の目を緩めるわけにはいかない。

オズマ :
その辺は任せるぜ。

バイパー :
ああ。俺は裏で。お前は表で戦え。

オズマ :
どっちもしんどい戦いだが……

……託されたオレたちが弱音を吐くわけにはいかねぇな。

 :
2

世界が混乱する中——

各諜報機関は協定関係を結び——

——裏から世界各地の問題解決にいそしんでいた。

サイファー :
ウィスキーをダブル。ロックで。

店主 :
あいよ。

グレイヴ :
……早かったな。

サイファー :
いたのかよ!?

グレイヴ :
……気配を消すのは得意だ。

サイファー :
で、話ってのは?

グレイヴ :
銀の王国で[火酒:かしゅ]が流行ってる。

サイファー :
そいつは火がついたら危険だな。

グレイヴ :
商売に使いたい。必要量はこれに書いてある。

サイファー :
(凶暴化した魔物を兵器転用だと?それを使って王家が圧政を強めてる……)

(もともと<[AC0D0D]革命軍[FFFFFF]>やら貴族と王家のぶつかりあいやらできな臭い国ではあったが……)

(どうやって魔物を使役してるんだ?)

(世界再生後の魔物は、<[AC0D0D]零[FFFFFF]>とやらの影響なのか、凶暴化してやがるし、とにかく倒しにくい……)

(かつての魔物ならともかく、今の魔物をどうやって……)

グレイヴ :
どうやら、その[火:・][酒:・]には特殊な製法があるらしい。

サイファー :
ああ、かなりキツイ酒だからな。飲んだらキツそうだ。

(なんだ、これは……?対零化生物兵器……?凶暴化した魔物に対抗するための技術ってことか……?)

この別の酒の件はどういうことだ?

グレイヴ :
うちの特注だ。カティアが発明した。流用して新しい酒も作ってくれ。

サイファー :
(凶暴化した魔物……零化生物とやらに対抗する武器を自分たちで作れってことか……)

注文は受け付けた。買いつけに行ってくる。

グレイヴ :
……お前がか?

サイファー :
……今の俺はお飾りの店長だ。実績をあげて発言権を増したい。

グレイヴ :
だが、代わりはいないだろう?

サイファー :
ついでにどこも人材不足でな。今、動ける奴は少ない。

グレイヴ :
……銀の王国の政情は不安定だ。気をつけたほうがいい。

サイファー :
わかってるさ。一人じゃ行かねぇよ。

グレイヴ :
……うちの頭取にはそう伝えておく。

……スッ……

サイファー :
(すげぇな、目の前で消えやがった……)

聞いてたか? アッシュ。

アッシュ :
ああ。

サイファー :
銀の王国で一仕事だ。行くぞ。

アッシュ :
エリスたちはどうする?

サイファー :
あいつらは後方待機だな。新人を連れてさばける仕事じゃない。

アッシュ :
了解した。

 :
3

ニナ :
おつかれさまです、アイシャさん。

アイシャ :
やあ、ニナ、おつかれさま。これが報告書だ。

ニナ :
ありがとうございます。二、三日ですがお休みを取ってください。ずっと働きづめでしたから。

アイシャ :
久しぶりの休暇か……溜まっていた本でも読むとするよ。

キリエ :
やあ、アイシャ、おつかれさま。

アイシャ :
……ここにいるなんて珍しいじゃないか。

キリエ :
実は追加で頼みたいことがあってね。

アイシャ :
……内容は?

キリエ :
凶暴化した魔物が厄介なことになっているのは理解しているよね?

アイシャ :
ああ、<[AC0D0D]零の汚泥[FFFFFF]>の影響を受けた魔物。零化生物だろ?先ほど終えた任務でも交戦したよ。

魔術の効きが悪いし、ルーンの力も弱まっている。

私のような概念使いでもなければ大変だろうね、アレの相手は。

キリエ :
零化生物を兵器流用している国がある。

アイシャ :
銀の王国だろ?たしか<[AC0D0D][V.O.X:ヴォックス][FFFFFF]>に割り当てられたんじゃなかったかな?

キリエ :
潜入していたエージェントから連絡が途絶えた。

アイシャ :
担当者は?

キリエ :
<[AC0D0D][00:ダブルオー][FFFFFF]>と<[AC0D0D][04:ゼロフォー][FFFFFF]>。サイファーとアッシュだ。

アイシャ :
聖王家代表が自らか……

キリエ :
<[AC0D0D][V.O.X:ヴォックス][FFFFFF]>のほうでも対処するそうだが、少々問題が生じていてね。

<[AC0D0D][00:ダブルオー][FFFFFF]>が最後に残したメッセージがこれだ。

アイシャ :
これは!?

キリエ :
一言『道化師』とだけ。真意は不明だ。

アイシャ :
銀の王国の生物兵器にエピタフが関わっているということかい?だが、死んだはずだ。

キリエ :
ああ、でなければ、ボクたちはとうの昔に消失している。

でも、相手はあの闇の道化師。ありえないことさえ起こしうる。

アイシャ :
……それで私にこの問題を解決しろと?

キリエ :
話が早くて助かるよ。聖王家代表の救出と零化生物兵器に関する情報の収集。それが君の任務だ。

アイシャ :
サポートは?

キリエ :
現地で<[AC0D0D][V.O.X:ヴォックス][FFFFFF]>と合流してくれ。

アイシャ :
了解したよ。

キリエ :
そうそう。法王[猊下:げいか]から新兵器を[賜:たま]わった。君用に調整してあるから持っていくといい。

対零化生物用の特殊武装だよ。怪物退治も少しは楽になるんじゃないかな?

アイシャ :
そうなってくれるといいけどね……占ってみるかな……

ニナ :
あ、ジェリービーンズ占いですね。

アイシャ :
……この味は……塩キャラメル味か……

ニナ :
どんな意味があるんですか?

アイシャ :
——革命。

 :
4

エリス :
とうとう着いちゃったね。銀の諸島に……

エスカ :
はい、着いてしまいました。先輩……

エリス :
サイファーとアッシュが!?

<V.O.X>事務員 :
はい。消息不明です。現在、別作戦中の<[AC0D0D][02:ゼロツー][FFFFFF]>と<[AC0D0D][03:ゼロスリー][FFFFFF]>を呼び寄せていますが……

エリス :
ダメだよ、あの二人は!連絡とかいろんなところがちゃらんぽらんだもん!気づいてくれないよ!!

<V.O.X>事務員 :
ですが、<[AC0D0D][00:ダブルオー][FFFFFF]>と<[AC0D0D][04:ゼロフォー][FFFFFF]>の任務を引き継ぎ、二人を回収できる人材となると……

エリス :
はいはい! ここにいます!!

<V.O.X>事務員 :
…………

エリス :
なんで黙るの!?

<V.O.X>事務員 :
<[AC0D0D][01:ゼロワン][FFFFFF]>と<[AC0D0D][09:ゼロナイン][FFFFFF]>に関しては待機を徹底させろと<[AC0D0D][00:ダブルオー][FFFFFF]>に言われておりまして……

エリス :
でも、今、動けるのはあたしとエスカちゃんだけだよ!

<V.O.X>事務員 :
それはそうなのですが……

エリス :
あたしたちだって<[AC0D0D][V.O.X:ヴォックス][FFFFFF]>だよ!サイファーたちの救出くらいできるよ!!

<V.O.X>事務員 :
……わかりました。お二人用の特殊兵装があるのでご利用ください。

ただし、<[AC0D0D][02:ゼロツー][FFFFFF]>と<[AC0D0D][03:ゼロスリー][FFFFFF]>が合流するまでは事前調査に留めておいてくださいね。

エリス :
二人を助けないと!

エスカ :
はい。初任務、がんばります!

ところで、その……具体的にどうすれば……

エリス :
ふふん、こういう時はね……

(どうしたらいいんだろう?ドリチョコくんの時とはなんかいろいろ違う気がするし……)

(でも、ここは先輩として頼りになるところを見せないとね!)

サイファーたちを探せばいいと思うよ!

エスカ :
なるほど、探すのですね。勉強になります!

エリス :
そう! 探すんだよ!先輩についてきてね、エスカちゃん!

エスカ :
はい! 学ばせていただきます!

兵士 :
おい、ここで何をしている?

商人 :
え? 商売を……

兵士 :
今は[戒厳令中:かいげんれいちゅう]だぞ!貴様、革命軍の関係者だな!

商人 :
え!? 違う!俺は何もしてない!

エリス :
……なんか雰囲気が暗いね。

エスカ :
先輩はご存知だと思いますが銀の王国は王家の重税によって民衆が[蜂起:ほうき]し、<[AC0D0D]革命軍[FFFFFF]>と呼ばれる組織を作っているそうです。

エリス :
ウン、シッテルヨ。カクニンシタダケダヨ。

エスカ :
そのうえ、貴族も王を倒そうとする急進派が[軍閥:ぐんばつ]を組織しています。

エリス :
(ぐんばつってなんだろ?)

エスカ :
王を倒すという目的は同じなのですが、急進派と革命軍は抗争中です。

エリス :
え? どうして?

エスカ :
急進派は王家を打倒し、貴族による政治を行いたい。革命軍は王家を倒し、政治を国民の手で進めたい。

見ている未来が違うからです。これであっているでしょうか?

エリス :
せ、正解だよ!さすがエスカちゃん!!

エスカ :
ありがとうございます!がんばります!

エリス :
で、サイファーが調べてた生体兵器って王家が使ってるんだっけ?

エスカ :
だと思われますけど……

兵士 :
おい、貴様ら。

今、王都は[戒厳令中:かいげんれいちゅう]だ。なぜ出歩いている?

エリス :
(ここはエージェントの先輩として華麗に誤魔化さないと!)

あはは……すみません。旅行中で、その……宿を探してるんです。

兵士 :
……あやしいな。荷物を見せろ。

エリス :
(まずいよ! 荷物の中に武器とか入ってるし!!)

兵士 :
おい、なにをしている?早く、そのカバンを……

エリス :
エスカちゃん!

エスカ :
はい!?

エリス :
ダッシュで逃げよう!!

エスカ :
え!? あ! はい!!

兵士 :
貴様ら! 待て!!!

 :
5

アイシャ :
(潜入には成功か……戒厳令中で人通りが少ないね……)

(<[AC0D0D][V.O.X:ヴォックス][FFFFFF]>のエージェントも今は動かないだろう……合流は夜でいい)

(王家、革命軍、急進派の貴族、どこに接触するのが得策か……)

(そういえば、彼は革命軍の関係者だったね……)

(銀の諸島の革命軍——王家の圧政に反旗を翻した武装勢力か……)

(だが、その実、王家の力を削ぎ、貴族の発言力を増したい急進派閥の先兵でもある……)

(実際、革命軍リーダーのエリーナ・グレヴィッチは急進派に属するグレヴィッチ家の貴族令嬢……)

(だが、エリーナは急進派の思惑に反する行動をとるため、パトロンとの関係は良くない。それこそ、実家との関係も最悪……)

(王家、急進派、革命軍……王家と急進派は近づき、革命軍が孤立している。そこに王家は生体兵器も用意した。革命軍の旗色は悪いね……)

(貧民街スラグヤード……接触してみるか……)

(人の気配が少ない……)

老婆 :
お嬢さん、こんな場所に来ちゃいけないよ。早く逃げなさい。

アイシャ :
知り合いに会いに来たんだ。名前は——

老婆 :
ほら、早く逃げなさい!王国軍だよ!!

王国軍隊長 :
全員動くな!!

アイシャ :
…………

王国軍隊長 :
テロリストを[匿:かくま]っているというタレコミがあった!

全員大人しく投降しろ!

老婆 :
ひっ!

王国軍隊長 :
撃て!!

アイシャ :
——拒絶する。

王国軍兵士 :
なんだ、貴様は!?

アイシャ :
人並みに敬老精神を持った地質学者だよ。

王国軍兵士 :
学者だと?怪しい奴め!!

大人しくしろ!

アイシャ :
逆らう気は——

子供 :
助けて!!

王国軍兵士 :
大人しくしろ!ガキがっ!!

テロリストのガキだ!容赦するなっ!!

アイシャ :
——無かったんだが、気が変わった。

王国軍兵士 :
息……がっ……!!

アイシャ :
君たちの呼吸を<[AC0D0D]拒絶[FFFFFF]>させてもらった。

……暴力を見逃すのも気分が悪くてね。君は早く逃げたほうがいい。

子供 :
ありがとう、お姉ちゃん!

王国軍隊長 :
テロリストを発見!拘束が無理なら処刑しろ!

アイシャ :
(もう少し穏便に進めるつもりだったんだが……私も疲れやストレスが溜まっているのかな?)

——派手に逃げさせてもらうよ。

 :
6

王国軍兵士 :
止まれ!!

アイシャ :
何度やっても無駄だよ。汝を<[AC0D0D]拒絶[FFFFFF]>する。

王国軍兵士 :
ぐあっ!

アイシャ :
(予定とは違う動きになってしまったが、これだけ派手にやれば——)

王国軍隊長 :
バケモノめ!囲め! 絶対に生かして逃がすな!

王国軍兵士たち :
ぐああああっ!!

王国軍隊長 :
なにが起きた!?

??? :
俺たちの庭で好き勝手やりすぎだぜ!

ザック :
食らいな!!

王国軍隊長 :
ぐあっ!!

アイシャ :
(——革命軍のほうから接触してくる。読みどおりだね)

王国軍兵士 :
隊長!

王国軍隊長 :
いったん退くぞ!

メグ :
退くってどこにだお?

ラヴィ :
もうアンタらしかいないんだけど〜?マジやばたにえんじゃ〜ん。

チタ :
ワンチャンあがいてみる?それ、バイブスあがるっしょ?

王国軍兵士 :
た、隊長! 囲まれてます!

王国軍隊長 :
ほかの者はどうした!?

??? :
それなら俺の足元でおねんねしてるぜ?

リアム :
——待たせたな! 俺だ!

王国軍隊長 :
誰だ!?

リアム :
なんだ? ツッコミ入れる程度に元気じゃねぇか。ザック、お前、なまったんじゃねぇのか?

ザック :
うるせえ、こいつらには聞くことがあるんだよ。

大人しくするなら命までは奪わないぜ。俺たちはお前らとは違うからな。

王国軍隊長 :
ぐっ……投降する。全員、武器を捨てろ。

チタ :
敵さんゲット入りました〜!あげぽよウェーイ!

革命軍たち :
ウェーイ!

ザック :
さてと……

アイシャ :
やあ、久しぶりだね。

ザック :
おう、アイシャだ!久しぶりだな!

リアム :
なんでお前、こんなところにいるんだ?

アイシャ :
それを言うなら、君だってここでは異邦人だろ?

リアム :
俺は傭兵としてザックに雇われたんだよ。

ザック :
ツケだけどな!

リアム :
はあ!? ふざけんな!マジで払えよ。

ザック :
いや、払えるもんなら払いたいけど、金が無くてよ〜……って、それよりアイシャだ!

今、いろいろヤバいことになっててな。旅行なら出てったほうがいいぞ?

アイシャ :
知人を探していたんだ。ついでにバイト先も探している。

そこそこ強い地質学者を使ってくれる場所があるなら力になれると思うよ?

ザック :
バイト代払える金はね〜ぞ?

アイシャ :
ツケでいいさ。

ザック :
よし! じゃあアイシャも革命軍の仲間だな!!メシくらいは面倒見るぜ!

リアム :
そんな簡単に決めていいのかよ?こいつ、絶対ぇ裏があるぞ?

アイシャ :
人聞きが悪いな、一緒に茶熊学園で学んだ仲じゃないか。

ザック :
そうだぜ、リアム。旅の恥はかきすてって言うだろ。

リアム :
言うけど今使う言葉じゃねー。ま、てめぇらがそれでいいなら口出ししねーよ。

ザック :
アジトまで行くからついてきてくれ。

アイシャ :
ああ、受け入れてくれて感謝するよ。

 :
7

ザック :
ここが俺たちの隠れ家だ。

アイシャ :
地下にあるとはね……

??? :
あっ!

エリス :
アイシャさん!?

アイシャ :
エリス・ミラージュ……そうか、君か……

エリス :
はい!サイファーを助けに来ました。で、こっちがエスカちゃんです!

エスカ :
よ、よろしくお願いします。

アイシャ :
(エスカ・オルハイム……嵐の国のオルハイム家の娘か……<[AC0D0D][V.O.X:ヴォックス][FFFFFF]>に保護されたと噂には聞いていたが……)

アイシャ・アージェント。地質学者をしている。

ザック :
なんだ? 知り合いか?

アイシャ :
ああ、昔、ちょっとね。

ザック :
そう言や、お前も人探しがどうとか言ってたな。

アイシャ :
ああ、彼女と共通の知人だよ。なにかわかったことでもあるかな?

エリス :
サイファーが捕まっちゃった!

ウェスタロス牢獄にいるかもしれないって教えてもらったんだ。

アイシャ :
ウェスタロス牢獄……

ザック :
政治犯が収監される牢獄だ。俺たちのボスもそこにぶち込まれた。

アイシャ :
革命軍のリーダーも捕まってるのかい?

ザック :
ああ、急進派の貴族どもに騙されたんだ。

アイシャ :
君たちと貴族は対立していたと聞いていたが?

ザック :
王を倒すまでは目的が同じだから共闘しようって持ちかけられてな。

俺たちと貴族が手を結ぶってなれば王家も譲歩しないといけなくなる。

話し合いで政治の形を変えられる可能性が出てきたんだ……

エリーナ :
アタシたちが欲しいのは民の参政権です。こちらに調印していただければ王家へ向けた剣を納めます。

国王 :
…………

エリーナ :
……フリーセン王。ご決断を〜。

フリーセン王 :
茶番だな。

ザック :
こいつら、急進派の……!?

エリーナ :
あーね……また急進派の連中にアタシら売られたってカンジ〜?

フリーセン王 :
グレヴィッチ家の娘よ、投降しろ。大人しくするなら、民は見逃してやろう。

エリーナ :
……アタシのイベサー、マジレベチなんだわ。簡単にはやられないんだな〜。

フリーセン王 :
貴様の命を盾にすれば話は別だ。ああ、それと……

貴様の両親も貴様を売ったぞ。まあ、奴らに罰を与えるも貴様次第だ。

エリーナ :
……アタシは投降する。革命軍、頼むよ〜。

ザック :
ボス!?

エリーナ :
とりま、ザックたちがいればどうにかなるっしょ〜!

ザック :
……っ!

兵士 :
逃がすな!!

エリーナ :
はい、ストーップ!ザックに手を出すなら、アタシはこの場で舌かんで死んじゃおっかな〜。

アンタらもアタシを罪人として吊るしたいんでしょ〜?

兵士 :
ぐっ!

エリーナ :
ザック! ぼけっとしない!!

ザック :
必ず助けに戻りますっ!!

さすがのボスも自分の両親が娘を騙すとは思ってなかった……グレヴィッチ家は俺たちのパトロンだったしな……

アイシャ :
革命軍はどうするつもりだい?

ザック :
……ボスは助け出す。ただ、いろいろ厄介なことになってるんだよ。

アイシャ :
どういうことだい?

ザック :
ボスの収監は王都の平民にも知れ渡った。ボスは人気者でさ……

民衆が暴発寸前だ。ボスが吊るされれば、怒りの矛先は全て王家に向かう。

噂じゃあ急進派が民衆を煽ってるって話だ。革命軍を潰して、平民に王家を打倒させる腹積りだろうさ。

血が流れすぎる。それは俺たちの目指す革命じゃねぇ。

リアム :
いつまでも甘ちゃんだな。血は流れるだろ。

ザック :
王家と平民がぶつかってズタボロになれば、その後に貴族が民を鎮圧するのは簡単だろ?

支配者が王から貴族に変わるだけだ。

リアム :
だから、革命軍が王国軍に圧勝して被害が少なく済めば、貴族の連中にも負けねぇだろ?そのための[傭兵:オレ]だ。

ザック :
それが無理だって言ってんだろ。連中は怪物を兵器にしてるんだしよ。

エリス :
……魔物を兵器にした生体兵器だね。

ザック :
ああ、ウェスタロス牢獄にも警備として配置されてる。

魔物と民衆がぶつかったら血みどろの惨状だ……

アイシャ :
なるほど……

(サイファーや革命軍のボスを助けるにせよ、王国軍と戦うにせよ、生体兵器が邪魔というわけか……)

エリス、生体兵器に関する情報をなにか得たりしてないかい?

エリス :
あります!!

ザック :
そうなのか!?

エリス :
これでも特務機ごほん!えっと、いろいろ調べたんだよ!あたしとエスカちゃんで!

エスカ :
はい、がんばりました。

エリス :
生体兵器の工場? みたいな施設はいくつかあるんだけど、お金の流れとか人の流れでマルクセル研究工場が生体兵器関連のターミナルになってるってわかったよ。

なんか重要な部品かなにかがマルクセル研究工場から他の工場に卸されてるとエスカちゃんが見抜いちゃいました!

さっすがあたしのお茶汲み後輩だね!みんなも褒めてあげて!

エスカ :
いえ、その……先輩のお仕事を真似しただけで……

ザック :
お前ら、すごいんだな。なんか王国軍に捕まりかけてたからノリで助けたけど……

リアム :
ノリで部外者、アジトまで連れてくるなよ……

アイシャ :
……ザック、私を革命軍の参謀として雇わないか?

ザック :
おう、いいぜ!アイシャは頭いいしな!

リアム :
だから、ノリで許可するな。指揮権はお前が持っとけよ、ザック。

アイシャ :
ああ、それでかまわないさ。エリス、エスカ、いろいろ手伝ってほしいんだが、頼めるかな?

エスカ&エリス :
了解!了解です!

 :
8

チタ :
ちゃんエリ、チョリーッス!これ、いつメン用のレポ。マジ、読んでビッグラブな内容だしレスよろ。

エリス :
ウェーーイ!あざまし!

メグ :
エリスたん、これ頼まれたものだお。

エリス :
おけまるだお!397!

ラヴィ :
これ、借りてたもん返すね。ジブン、めちゃ[好:ハオ]かも。

エリス :
い〜よねぇ、あたしもめちゃ[好:ハオ]だよ。

アイシャ :
…………

エスカ :
アイシャさん、どうしたんですか?

アイシャ :
……いや、革命軍のメンバーが何を言っているのか、よくわからなくてね……

エスカ :
アレは革命軍内の暗号会話だそうです。

パッと聞いた時に何を言っているかわからなくすることで、敵に対する情報伝達を阻害する意図があるとか……

エリス :
アイシャたん、いつメンからレポもらったお。内容、めちゃビッグラブ!

アイシャ :
……すまない、エリス。普通に喋ってくれ。

エリス :
おけまる!

チタ :
あ、ちゃんアイ……

失礼しました、参謀殿。自分が頼まれてた民衆の蜂起に関する報告書です。

エリス :
え、ちゃんチタ、普通に喋れるの!?

チタ :
ウェーイ! ジブン、マジで喋ると周りのバイブス、ダダ下がりなんで〜。

エスカ :
(人格まで変わってる気が……)

チタ :
アイシャさん、いつもの癖で暗号会話を使ってしまい、申し訳ありませんでした。

アイシャ :
……いいや、かまわないよ。報告書はありがとう。

チタ :
それでは失礼します。ウェーイ! 全員、バイブスぶちアゲてこうぜ〜!ひあうぃごー!

エスカ :
(最後まで貫けなかったのでしょうか……)

エリス :
アイシャさんも暗号会話、覚えないの? 便利だよ?

アイシャ :
……私は遠慮しておくよ。

ザック :
お、ここにいたな。アイシャ、相談がある。

アイシャ :
なんだい?

ザック :
ボスの処刑日が決まった。三日後の建国記念日だ。

エリス :
もうすぐじゃん!

ザック :
ああ、街の連中もその前に牢獄を襲撃するつもりだ。当然、王家もそれをわかってる。警備用のバケモノの数も増えてってるよ。

アイシャ :
なるほど……研究施設の警備のほうは?

ザック :
牢獄のほうに回されてるから施設のほうの警備は減ってる。忍び込むなら今だな。

アイシャ :
急いだほうがいいね。私が行こう。

ザック :
俺も行くぜ!

アイシャ :
君は革命軍を指揮したほうがいいんじゃないのかい?

ザック :
俺の言うことなんて大して聞かねーよ。ボスの存在がデカいからな。それに兵法とか軍事のことはリアムに一任してる。

エリス :
あたしたちも潜入します!

アイシャ :
いや、君たちは革命軍と一緒に民衆の暴走を抑えてほしい。

エリス :
どうして?

アイシャ :
まず君が使う<[AC0D0D]支配[FFFFFF]>の概念が、いざという時に頼りになるからだ。

自分の能力にいいイメージは無いようだが、君の<[AC0D0D]支配[FFFFFF]>はこういう時にこそ使える。

エリス :
…………

アイシャ :
エスカも同様だ。オルハイムの者は植物の力を使えると聞く。

エスカ :
どうしてそれを……

アイシャ :
耳が良くてね……君の力も屋内より外のほうが有用だろう?

エスカ :
……はい。そうですね。

アイシャ :
それにエリスは人の懐に入るのが得意だ。街の人ともうまくやれるだろ?

エリス :
もう商人のおじ様とか酒場のおば様とも仲良くなってるけど……

アイシャ :
君のコミュニケーション能力はこういう時に役立つからね。そちらは頼むよ。

エリス :
うん! わかった!

アイシャ :
民衆が暴発する前に私とザックは生体兵器の情報を手にいれる。

ザック :
任せな。そういうのは得意だぜ!

 :
…………

……

アイシャ :
準備はいいかい?ザック。

ザック :
おう!現場のことはリアムたちに任せた。

リアム :
報酬分の仕事はしてやるよ。

メグ :
こっちはお任せだお!

ラヴィ :
ザック、ヘマすんなよ〜。

エリス :
アイシャさん、無理しないでね。

アイシャ :
ああ、君もね。

エスカ :
数が減ってるとはいえ、生体兵器は強力です。お気をつけください。

チタ :
それでは戦勝を願って!KPー!! ウェーーイ!!

革命軍たち :
KP!!

アイシャ :
…………

リアム :
いきなりパーティーはじめんなよ。アイシャ、引いてるぞ。

アイシャ :
……いや、もう慣れたよ。

 :
9

ザック :
さすがだな、アイシャの言うとおり動いたら、簡単に忍び込めた。

アイシャ :
監視がザルだったからね。生体兵器は細かい動きが苦手なようだ……

ザック :
なあ、アイシャ……

アイシャ :
なんだい?

ザック :
あんた、地質学者ってのは嘘なんだろ?

アイシャ :
嘘じゃないさ。

ザック :
じゃあ、別の肩書きやら何やらがあるってタイプか?うちのボスみたいに。

アイシャ :
……生きていればいろいろあるさ。君だってそうだろ?

ザック :
ま、そうだな。

アイシャ :
どうして革命軍に?

ザック :
入ったのは流れっつーか……まあ、普通に親が死んでさ……

ザック父 :
このままじゃあ[餓死:うえじ]にしちまう。俺は決起集会に参加するぞ……

ザック母 :
でも、大丈夫なのかい?みんな捕まってるって聞くよ。

ザック父 :
それでも立ち上がらなきゃならねー。ザックに俺たちみたいな思い、させたくねーしよ。

ザック :
俺はベッドの中でそんな両親の会話を聞いてたんだ。その頃は何言ってんのかわからなかったけどな……

親父は決起集会に参加したっきり帰ってこなかった。代わりに王国軍の兵士が家に来た。

王国軍兵士 :
ルディ・レヴィンの家族だな。貴様らには国家[騒乱罪:そうらんざい]の[嫌疑:けんぎ]がかけられている。

ザック母 :
ザック、逃げな!

王国軍兵士 :
動くな!!

幼きザック :
母ちゃん!!起きてよ、母ちゃん!

王国軍兵士 :
このガキ、どうします?

……放っておけ。どうせ一人では生きていけない。

ザック :
それで孤児の仲間入りだ。ま、当時は別に珍しくなかったけどな。どこもかしこも同じようなガキで溢れてた。

人が死ぬのってさ、体の傷だけじゃなくてな。孤児は心の弱い奴から死んでいく。絶望が俺たちを殺していくんだ。

なんて名前だったかな?すごく優しい奴がいてさ……そいつが夢を語ったんだ。

<[AC0D0D]革命[FFFFFF]>って夢だ。今の状況は全部王様が悪いから王様をぶっ倒して、うまいもんいっぱい食おうぜって夢だ。

その夢が希望になった。絶望に効く薬だよ。当然、俺も乗っかった。

<[AC0D0D]革命[FFFFFF]>って夢の下、俺たちは徒党を組んだ。ま、ロクでもない悪ガキの集団だよ。

でも、リーダーだった奴が死んで、気づけば、みんな<[AC0D0D]革命[FFFFFF]>を忘れて……

救いようのねー悪ガキの集団に成り下がってった……

で、その時に出会ったのがボスだ。

アイシャ :
エリーナ・グレヴィッチ……彼女は貴族だろ?どういう出会いだったんだい?

ザック :
貴族を拉致って身代金をゲットする作戦で、拉致った。それがボス。

で、俺はボスの口車に乗っかってボスを革命軍に入れた。

そしたら、あっという間にただの悪ガキ集団が本物の革命軍になってった。

アイシャ :
……噂どおりの傑物だね。

ザック :
ああ、あの人はすげーんだよ。

処刑なんて絶対にさせねー。

アイシャ :
ああ、そうだね。そのためにもやるべきことをやろう。

ザック :
バレないもんなんだな……

アイシャ :
私たちに対する認識を拒絶してるからね。

ザック :
超便利だな。

アイシャ :
万能じゃないさ。ザック、そこでストッ——

ザック :
え?

げっ!

アイシャ :
人の目はともかく機器やトラップの類は誤魔化せないからね。

警備兵 :
侵入者発見![熾零魔獣:ネビュラス]を出せ!

ザック :
しくった! 悪ぃ!

アイシャ :
しかたがない。調査兼破壊工作に移行しよう。

 :
10

ザック :
おらよ!!

この武器、すごいな!マジで使えるぜ!!

アイシャ :
試験運用は上々ってところかな。対策される前に中央研究棟に進もうか。

ザック :
なんだこれ……

アイシャ :
これは……

……<[AC0D0D]零の汚泥[FFFFFF]>が出てきた穴!?

どうしてこんなものがここに!?

ザック :
なんだよ? そんなにヤバいのか?

アイシャ :
この穴は世界消失災害の原因だ。

キリエ :
<[AC0D0D][00:ダブルオー][FFFFFF]>が最後に残したメッセージがこれだ。

アイシャ :
これは!?

キリエ :
一言『道化師』とだけ。真意は不明だ。

アイシャ :
(闇の道化師が関わってるとしか考えられない……)

警備兵 :
侵入者がポータルエリアに![熾零魔獣:ネビュラス]を出せ!

バカ! 装置にまで被害が出る!

??? :
なら、私が出よう。

久しぶりだね、私の愛しい怪物……

アイシャ :
ツァラ……いや、ハビエルか!?

ハビエル :
ああ、そうだ。私はハビエルでもあり、ツァラでもあり、ミゲルでもある。

アイシャ :
どうしてお前が?死んだはずだ……

ザック :
おい、なんだ?知り合いか!?

アイシャ :
ああ、死んだはずの私の養父だ。

ザック :
はあ?

アイシャ :
……容赦しなくていい。アレは怪物だ。

ハビエル :
さあ、我らの演劇の再演といこうじゃないか。

 :
11

青年 :
こんなの間違ってる!俺たちはいつまで王家に奪われ続けないといけないんだ!?

今こそ、立ち上が——

エリス :
あ、お茶入ったよ!

青年 :
あ、うん、ありがとう。いい香りだね。いや、そうだな、どこまで話したっけ?

老人 :
今こそ、立ち上が、まで聞いたぞ。

青年 :
ごほん。今こそ我々は立ち上が——

エスカ :
カヌレ、できました!おひとつどうぞ♪

青年 :
え!? カヌレぇ?いや、うん、ありがとう、いただくよ。なんだ、これ!? あっまーーい!

エリス :
みなさんもお茶とお菓子をどうぞ。

老人 :
ありがとう。こりゃ、うまいな。

子供 :
おいしい!!

青年 :
たしかにうま——

今、演説中なんだけど!?

エリス :
紅茶とカヌレ、まずかったかな?

青年 :
いや、うまかったけど!でも、今はそれよりも!

エリス :
そんなに大きな声出さないで。はい、またお茶入れたよ。

青年 :
ありがと……って、だから!今、演説中で……

エスカ :
ケーキもできました。いりませんか?

青年 :
うんめぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!

メグ :
エリス、ナイスだお!これで決起集会、二つも潰したお。

エリス :
おいしいお茶とお菓子があれば世界が平和になる。

ラヴィ :
砂糖作戦、エグいほどバズってドン引き!さすエリじゃね?

エリス :
ちゃんチタのほうはどうだった?

チタ :
国民軍に武器を供給すると約束しました。ただし用意するのに時間がかかると伝えたので、決起の[遅滞:ちたい]には成功しそうです。

エスカ :
(いきなり口調が変わると違和感しかありません……)

エリス :
……でも、本当にこの国って大変な状況なんだね……

お菓子作戦がここまで効果出たのって、甘い物もほとんど食べられないからで……

メグ :
……砂糖は貴重だお。それに[嗜好品:しこうひん]扱いだから税金もかかるんだお。

ラヴィ :
貴族御用達の店には腐るほどあったけどね。

エリス :
お菓子食べた人たち、みんな笑顔だったんだ……おいしいおいしいって食べてくれて……

……なんか嬉しいけど、悲しくて。

チタ :
……ジブン、みんな[大好き:DS]なんすよね。酒場のおっちゃんもいつメンだし、軍で兵士やってる奴も昔のツレだったりして……

好きなツレたちが戦争するとかマジ、[辛い:メンブレ]っすわ。

エリス :
……話し合いで解決できないのかな?

チタ :
ボコるなら[ゴミ:GM]な王様と貴族たちだけでよくね?ってボスの言うことマジわかるんすよね。

でも、他サーの連中はそうは思わないんすよ。内乱とかで親とか死んでますし……

ラヴィ :
重税に重税の嵐で餓死とか普通だしね……マジゴミだわ、王家……

メグ :
爆発寸前だったのをボスが止めてたお。ボスはみんなの人気者だったお。

チタ :
ジブンたちみたいな孤児に仕事用意したり、他サーとも連携して、アパレル系の事業起こしたり……

最近はみんな食えるようになってたんすよ。みんな、ボスのこと、マジ神だなって……

メグ :
景気がよくなったところにまた税金が増えたお。それでみんな激おこだお!

チタ :
ぶっちゃけ、ジブンもすぐに決起集会に参加したいっすよ。でも、ボス、そういうの嫌いなんで……

メグ :
ボスは血を流すような革命を嫌がってたお……

エスカ :
……暴発だけは食い止めましょう。

エリス :
うん、そうだね。

ラヴィ :
とりま、次の決起集会、邪魔しにいくか。

チタ :
ウェーイ!

エスカ :
そして、私は先輩と一緒に、いくつもの決起集会を邪魔し……

地元の有力者とも話し合い、ウェスタロス牢獄への襲撃を待ってもらうように説いて回りました。

エリス :
…………

エスカ :
先輩、漁業組合の人ももう少し待ってもらえるみたいでよかったですね。

エリス :
そうだね……

エスカ :
先輩、どうかしたんですか?

エリス :
……あはは。サイファーとアッシュのことが心配になっちゃって……

牢屋でご飯食べてるかな?とか、牢名主にイジメられてないかな? とか……

エスカ :
サイファーさんとアッシュさんなら大丈夫ですよ。

エリス :
うん、そうだね。この件、二人で解決して、お茶汲みから卒業しないとだね!

エスカ :
はいっ!

チタ :
大変だ!

エリス :
どうしたの、ちゃんチタ!

チタ :
街の連中が……

……ウェスタロス牢獄前に集まってる!

 :
12

ザック :
おらよ!!

ハビエル :
ぐっ……アイシャ……

アイシャ :
……<[AC0D0D]拒絶[FFFFFF]>する。

ハビエル :
はははははは!お別れだ! 私の怪物よ!

アイシャ :
……私は怪物などではないよ。

ザック :
おい、アイシャ、どうする!?ジリ貧だぞ!?

アイシャ :
…………

……しかたがない。少し本気を出す。ザック、私の背後に回ってくれ。君を巻き込みかねない。

ザック :
なんだ? 奥の手でもあるのか?

アイシャ :
世界消失災害の時に、黒幕と戦ったんだよ。その時に、かなり無茶をしてね……

それでも奇跡は起こせなかったが、少々、私自身のスペックがあがってしまった。

ザック :
オッケー、よくわかんねーけど、参謀に任せるぜ!

警備兵 :
狙えっ!ポータルには当てるなよ!

アイシャ :
——世界を<[AC0D0D]拒絶[FFFFFF]>する。

(<[AC0D0D]拒絶[FFFFFF]>の概念の重複並列使用。零や理の<[AC0D0D]拒絶[FFFFFF]>にまでは至らなかったが……)

(……ただの生命が私の<[AC0D0D]拒絶[FFFFFF]>に抗うことはできないよ)

ザック :
全滅した!?

アイシャ :
この施設にいる人間、全ての意識を<[AC0D0D]拒絶[FFFFFF]>した。あとは私たちに関わる記憶や戦意もね。しばらくは使い物にならないだろう。

ザック :
施設全体ってマジか!?

アイシャ :
ああ、ざっくりとだがね……戦いながら調査するのも面倒だろ?

ザック :
そりゃあそうなんだけど……大丈夫か? なんか顔色、悪いぞ。

アイシャ :
少々無理をしたが、大丈夫だよ。

(怪物か……)

(嫌な気分だ……<[AC0D0D]拒絶[FFFFFF]>したいモノに近づいていくというのは……)

……調査を進めよう。この穴が私の考えているモノなら危険すぎる。

ザック :
おう!

 :
…………

……

ザック :
いろいろ資料はみつけたけどよ、なんか難しいことばかりで俺にはよくわかんねーな。

アイシャ :
…………

……なんてことだ。

ザック :
どうした?

アイシャ :
君は王家が使っている生体兵器、[熾零魔獣:ネビュラス]と呼ばれるモノをどんな兵器だと認識している?

ザック :
凶暴化した魔物をなんかの技術でコントロールしてるんじゃないのか?

アイシャ :
私もそう思っていた。でも、違う。

この穴……ポータルと呼ばれるモノは外の世界に繋がってる。

ザック :
外の世界?

アイシャ :
世界消失災害時に<[AC0D0D]零の汚泥[FFFFFF]>と呼ばれるモノや、死んだはずの魔人や魔物を召喚した穴と同じ仕組みだ。

ザック :
え!? いや、でも、それって……

アイシャ :
<[AC0D0D]零世界[FFFFFF]>と呼ばれる外側の世界は未知の領域だが、そこには過去未来、様々な情報があるとされている。

この施設は<[AC0D0D]零世界[FFFFFF]>にある情報を強引に引き出し、その上でこちらの人間に制御できるように情報を操作する装置だ。

ザック :
はあ? なんだよ、それ!?

アイシャ :
生き死にを問わず、人や魔物など関係なしに、好きに作り出し、好きに制御できる。そういうデタラメな装置だよ。

こんなもの、人が手を出していい代物じゃない。即刻、破壊すべきだ。

??? :
——それは困りますねェ。

ワタクシの作ったモノを好きにはさせませんヨォ?

アイシャ :
……どうして貴様が生きている?

エピタフ!

 :
13

国民 :
王家の横暴を許すな!!

民衆 :
許すな!!

国民 :
革命の戦士を解放しろ!!

民衆 :
解放しろ!!

王国軍兵士 :
た、隊長、このままでは……

王国軍隊長 :
[熾零魔獣:ネビュラス]を出せ……

王国軍兵士 :
し、しかし……

王国軍隊長 :
いいから出せ!貴様も[粛清:しゅくせい]されたいのか!?

王国軍兵士 :
……わかりました。

国民 :
王家の横暴を許すな!!

民衆 :
許すな!!

熾零魔獣 :
————

民衆 :
うわあああああああっ!

国民 :
あいつら、撃ってきやがった!

武器を持て! 負けるなっ!!

民衆 :
うおおおおおおおおっ!!

エスカ :
そんな……

チタ :
クソがっ!!

エリス :
間に合わなかったの……?

民衆 :
ぎゃああああああ!

エスカ :
こんなの、一方的すぎます!

チタ :
だから待てっつったのに……!

ラヴィ :
チタ、どうする!?

チタ :
……わかんねーっすよ!

エリス :
……街の人を助けよう。

このままだと被害が広がるばかりだよ……

リアム :
群衆はすぐに崩壊する。革命軍で[殿:しんがり]を務めて被害を少しでも抑える。その方針でいいか?

ラヴィ :
……それしかなくなくね?チタ、メグ、いつメンに伝達よろ。[遅滞:ちたい]作戦ドタキャンかまして牢獄前にイン。ジブンらもイベに参加。

チタ&メグ :
りょ!りょだお!

ラヴィ :
ボス、さーせん……ジブンら、ボスの願い、叶えられませんでしたわ……

リアム :
革命軍が到着するまで、あのバケモノどもは俺たちで請け負う。足、引っ張んなよ。

エリス :
うん!行こう、エスカちゃん!

エスカ :
はいっ!

 :
14

孤児仲間 :
貴族の誘拐なんてチョロかったな。

警備もザルだったし、これはいいシノギになるぜ!

ザック :
バカ、身代金もらうまでが誘拐だ。おい、クソ貴族、お前の家、どれくらいなら金出せそうだ?

エリーナ :
アンタらさ〜、革命軍なんでしょ?こんなことしてなにか変わるの?

ザック :
身代金をもらって飯が食える。すっげー変わるだろ。

エリーナ :
ダサい。

ザック :
あ?

エリーナ :
アタシを拉致るのはいい。身代金を手にいれるのもギリオッケ〜。

ただ、それ全部、ご飯に使うってのがダサいかな〜。

それじゃあ、アンタたちは死ぬまで利用される家畜じゃんね〜。革命軍が聞いて呆れるよ。

孤児仲間 :
貴族が偉そうに言うんじゃねー!

ザック :
落ち着け。そいつは人質だ。傷つけたら価値がさがるだろ。

つっても、俺もあんたの言葉には少しカチンと来たぜ?貴族様ってのは明日を考えないでいい身分だろ?でも、俺たちには明日の保証なんて無い。

エリーナ :
アンタは明日のことでへこんでるかもだけど、アタシはさらにその先考えてへこんでんの。

想像してみ?アンタの子供がどういう生活をするかをさ〜。

[楽:らく]させたげようとか思わない?それがアンタたちの革命なんじゃないの〜?

ザック :
……革命なんて無理に決まってんだろ。

エリーナ :
革命軍を名乗ってるのに革命を否定するんだ〜?

ザック :
誰も本気で革命を起こそうだなんて思ってねーよ!!それでも……ありえない夢でも縋るしかないだけだ……

エリーナ :
アンタの子の代もそれでいいワケ?起こせない革命って夢で騙されてその日を生きてくだけの生活。超負け犬じゃ〜ん。

ザック :
知らねーよ!!

エリーナ :
知らないは嘘っしょ。今、気づいたんじゃね?

アタシは変えたい。

誰もがかわいいカッコできる未来が欲しいかな〜。でさ、アタシにはそれができると思うんだよね〜。

ザック :
はあ? 縛られてるお前になにができるってんだよ!?

エリーナ :
アンタに会うためにわざと拉致られたって、気づいてないの〜?

ザック :
はあ!?

エリーナ :
アンタにだって明日は変えられるよ。

ザック :
なに意味わかんねーこと言ってんだよ?

エリーナ :
身代金手に入れても、アンタたちは後で殺される。貴族を舐めないほうがいい。

だから、アタシが力を貸すって言ってんの。お互い、協力したら、バカな貴族から金ふんだくれるじゃん。ついでに家出したかったし。

ザック :
はあ?

エリーナ :
そのお金でさ、商売はじめるの。で、稼いだお金で仲間を集める。

集めた仲間でこの国を変えるんだ。国を変えて未来も変えよ〜よ。

ザック :
……あんた、なに言ってんだよ?

エリーナ :
何百年も腐った政治をする王家をぶっ潰す話をしてる。

ザック :
…………

エリーナ :
革命軍所属、スラグヤードの銀狼ザック・レヴィンだっけ〜?

アタシと一緒に本物の革命やってみない?

…………

(昔を思い出すなんて、あたしもヤキが回っちゃったかな〜……?あ、でも、昔っていうほど昔でもないか……)

フリーセン王 :
民が貴様を救うためにウェスタロス牢獄に集結したそうだぞ。

本当に愚かな連中だ。

エリーナ :
……アンタの民でしょ〜?

フリーセン王 :
無礼な物言いは慎め。今すぐ首を刎ねてもいいのだぞ?

エリーナ :
失礼いたしました……あなたの民を愚かと言うのはいかがなものでしょうか?

フリーセン王 :
私の物をどう扱おうと私の勝手だろ?

エリーナ :
……そのあなたの所有物が、あなたの悪政によって傷つけられ、数を減らしてきました。

それについて、王はどのようにお考えでしょうか?

フリーセン王 :
民など雑草と同じだ。放っておいても増えるが、増えすぎると不快で困る。

力を持たせぬよう適度に踏みつけ、必要とあらば、根ごと抜く。それでも増える。

エリーナ :
……傲慢すぎるっしょ。

フリーセン王 :
民を肥やさぬのは政の基本だ。グレヴィッチ家とて同じことをしていよう?

エリーナ :
……アタシも腐った貴族ですよ。

ただ、腐ってるなりに同族嫌悪が激しいのです。

フリーセン王 :
結果、王にたてつき、貴様の理想は[露:つゆ]と消える。愚かな民に振り回されて死ぬとは[滑稽:こっけい]この上ない。

エリーナ :
残念ですよ、フリーセン王……アタシは皆が笑える未来を見たかった……

貴族も平民も……そしてあなたも……ただ、その理想の実現はむずかしそうです。

フリーセン王 :
私だけ笑う未来しか無い。貴様が民を焚き付けたせいでこれから多くが死ぬ。

貴様が殺すのだ。エリーナ・グレヴィッチ。

エリーナ :
……言われずとも理解しています。ですが、殺すのはアタシだけじゃない。

あなたの意思だ。いずれ、民の怒りが王家にも届くでしょう。

フリーセン王 :
はっはっはっは!それは楽しみだ。だが、貴様が死ねば革命の火も消えよう。

エリーナ :
仮に革命の火が消えても、怒りと嘆きは消えない……

民は雑草だと言ったが、たしかにそのとおりです。

踏まれても尚立ち上がる。かような強さは己の足で立つ者たちにしか無い。

自らの力で立てぬ者は、いずれ、肥え太った体を支えきれずに倒れるでしょう。

フリーセン王 :
不敬である。

エリーナ :
…………

フリーセン王 :
まあいい。貴様の処刑方法は火刑と決まった。

果たせぬ理想に焼かれ、苦しみながら死ぬがいい。