![](http://ac.namu.la/20240613sac/3864528f0a3da66a003067852528d3971e2bb2cadf32be458ec3f0f589907bd2.png?expires=1719795600&key=q-5p6p5CETPnnOXcfHCY7w)
:
1
生物兵器の調査のため、銀の諸島に潜入したアイシャは——
圧政をしく王家に抗う革命軍と協力することになった。
先に潜入し、消息を絶ったサイファーたちを救い出すため来島していたエリスたちとも合流する。
アイシャは生体兵器の調査のため、マルクセル研究所へ——
同じ頃、民衆はウェスタロス牢獄前で蜂起を開始。戦闘が始まってしまう。
そして、研究所に潜入したアイシャたちの前には、倒されたはずのエピタフが立ち塞がっていた。
ザック :
くらいやがれ!!
次から次に!アイシャ! そっちは!?
エピタフ :
アハハハ、それそれェェ!
アイシャ :
…………
エピタフ :
随分と頑丈ですネェ……ナラ、これはどうですかァ?
アイシャ :
……茶番だね。
エピタフ :
え?
アイシャ :
——汝を<[AC0D0D]拒絶[FFFFFF]>する。
エピタフ :
これハ……?
アイシャ :
見た目を取り繕っても無駄だよ。闇の道化師はもっと強い。
私が戦った時は姿も名前も違ったが、こんなものじゃなかった。
正体を現せ。
エピタフ? :
グッ!
アイシャ :
君は何者だい?エピタフとは思えないが……かと言って、ポータルを作れるのは闇の道化師くらいだろう。
エピタフ? :
フ……
ギャハハハハハ!
アイシャ :
……死んだ?毒を飲んだか……
ザック :
アイシャ! 終わったか?
アイシャ :
ああ。そっちも終わったようだね……
ザック :
こいつはなんだったんだ?
アイシャ :
わからないよ。
ザック :
そっか……じゃあ、[熾零魔獣:ネビュラス]の対処方法は?
アイシャ :
制御する者の登録が必要だそうだ。それはポータルから怪物を生み出す際になされる。
既存の兵器を私たちがコントロールする方法は無いみたいだね……
ザック :
じゃあ、敵の制御してる奴を潰せってことか?
アイシャ :
それは危険だ。その場合は単純に制御を失ってしまう。
敵味方関係なく暴れ出すだけだ。
ザック :
攻略法は無いってことか……
アイシャ :
いや、やりようはあるさ……
ザック、伝声のルーンだ。
ザック :
ザックだ。どうした?
チタの声 :
パイセン、すんません!暴発止められませんでした!
ザック :
マジかよ!?
チタの声 :
今、革命軍でも対処を進めてます!
アイシャ :
急いで戻ろう。
ザック :
ああ、でも、この装置はどうするんだよ?
:
機密保持のため、当施設は10分後に爆破されます。繰り返します。機密保持のため——
アイシャ :
ということらしい。
ザック :
無茶苦茶やりやがるぜ!
:
2
エスカ :
<[AC0D0D]知恵者エスカの名において、勝利の栄光を此処に示さん。樹雨の柳、羽状の水明を我が身に映せ[FFFFFF]>
<[AC0D0D]玲蒼の樹冠――バハル![FFFFFF]>
リアム :
やるじゃねーかよ!
エリス :
エスカちゃんはあたしの後輩だからね!てーい!!
これでも特務機ごほんげふん!さすらいのお菓子クリエイターだから!
エスカ :
先輩! 数が多すぎます!
エリス :
でも、あたしたちが諦めたら街の人に被害が出るよ!
ここが踏ん張りどころだよ!
リアム :
おい、特務機関ども!
エリス :
え!? 特務機関?な、なんのこと!?
リアム :
なんか奥の手みたいな力、無いのか? アイシャがごちゃごちゃ言ってただろ。<[AC0D0D]支配[FFFFFF]>がどーたらとかさ。
エリス :
えっと、その……一応、<[AC0D0D]支配[FFFFFF]>の概念とか使えるけど……
リアム :
それ、使え!
エリス :
使ってみたけど、魔物には効かなくて!だから、その……
エスカ :
で、伝声のルーンです!はい、こちら、エスカです!
アイシャの声 :
チタから状況は聞いている。既に戦闘に入っているようだね。
エリス :
アイシャさん!めちゃヤバでみんなメンブレだよ!
アイシャの声 :
君の概念の力を使え。生物兵器ではなく、それを指示している人間に。
すまない、こちらも……今、取り込んでて……
ザックの声 :
やべー!カウントダウンはじまった!!リアム、そっちは頼んだぞ!
リアム :
バケモノに指示飛ばしてる奴ね……あいつか……
その<[AC0D0D]支配[FFFFFF]>の概念とやらは何ができるんだ?
エリス :
……対象を<[AC0D0D]支配[FFFFFF]>できます。ただ最初に近づいたりしないとできない。触れれば確実かな。
リアム :
なら、試すぞ。エスカ、援護しろ。お前の水で魔物を押し流せ。
その後、俺が突っ込む。エリス、お前はついてこい。行くぞ!
エスカ&エリス :
は、はい!了解!
エスカ :
<[AC0D0D]玲蒼の樹冠――バハル![FFFFFF]>
リアム :
行くぞ、おらーーー!
エリス :
おらーーー!
リアム :
(ここいらが限界か……ま、充分近づけた)
エリス! こっち来い!!
エリス :
え!? え? きゃああ!なんで持ち上げるの!!
リアム :
飛んでけラースブレイザーーー!!
エリス :
きゃあああああああああ!!
無茶苦茶だーーー!
けど! 近づけた!!
あたしはあなたを<[AC0D0D]支配[FFFFFF]>する!
怪物に戦闘をやめるように命じて!
兵士 :
戦闘停止だ。やめろ。
エスカ :
止まった……
リアム :
成功だな……
国民 :
バケモノの動きが止まった!?
今だ! トドメを刺せ!このチャンスに牢獄まで突っ込めー!
王国軍兵士 :
クソ! なぜ[熾零魔獣:ネビュラス]が動かない!?
これ以上、牢獄に近づけさせるな!迎撃しろ!!
王国軍兵士たち :
うおおおおおおおっ!
リアム :
バケモノ止めても、人間同士の戦いに変わるだけか……
エリス :
こんなの、ダメだよ……
:
3
エリス :
みんな、やめてよ!こんなの……
??? :
だったラ、まとめて、壊しちゃえばイイじゃないデスかァ?
エリス :
え!?
熾零魔獣 :
GYAAAAAA!!
リアム :
めんどくせえ!寝てろよ!
エピタフ? :
ギャハハハハハハハ!滅びはこうでなくっちゃあネ♪
エリス :
どうしてこんなことするの!?
エピタフ? :
ただのお手伝いですヨ。無血の革命。綺麗な戦争。理想という名の[粉飾:ふんしょく]を、こうして皆様にお[披露目:ひろめ]しただけデス。
悲鳴 :
ぎゃああああああ!
誰か助けてくれぇぇっ!
痛いぃ!
エリス :
っ!
エピタフ? :
目を背けちゃダメですヨ。これガ、あなたの世界。これが滅びと終わり。
戦争と殺戮もまたひとの営みなのデスから!
エリス :
あああああああっ!!
エピタフ? :
ギャハハハハハ♪楽しいデスねぇ!
エリス :
こんなのダメ……
少年 :
やっと出られた!
少女 :
わたしたちも、エリスやサイファーみたいに、大人になれるのね!
エリス :
そうよ。立派な大人になって、一つになる。あの時みたいに。
少年 :
わーい!これからは、ずっと一緒だよ!
少女 :
わたしも、エリスみたいにキレイになれるかな!
そ、そしたらあたし、サイファーと、デート……し……て……
少年 :
あ……あ……あ……
子どもたち :
ああああああああああっ!
少年 :
痛い痛い痛い痛いいいいい!!
少女 :
熱い、体が熱いよう!どうして!?なんでえぇぇぇぇ!
たすけて! たすけてサイファー!
少年 :
どうしてなの!?僕たちは、みんなと……みんなと……!
エリス :
あの時と同じ……
エスカ :
先輩!しっかりしてください、先輩!
リアム :
チッ! どうして道化師が……死んだんじゃねーのかよ……
エスカ!エリスはどうなってんだ!?
エスカ :
わかりません……
リアム :
声をかけ続けろ!バケモノは俺がどうにかする!
エスカ :
はいっ!
:
4
エリス :
あたしはみんなを……
……また救えないの?また失っちゃうの?
??? :
——しっかりしてください!
エスカ :
先輩っ!!
先輩! しっかりしてください!
先輩! 私たちでサイファーさんとアッシュさんを助けなくちゃいけないんです!
私一人じゃ無理なんです!先輩がいないと!
エリス :
エスカ……ちゃん……?
エスカ :
先輩!
エリス :
(そうだ、私は先輩だ……大切な人がいるんだ……だから、先に進んでいくよ……)
みんなと一緒に……
エスカ :
先輩、大丈夫ですか?
エリス :
うん……そうだね、今のあたしは先輩だもんね。
後輩に情けないところ、見せらんないよ!
エスカちゃん、少し時間稼いでくれないかな?あたし、一人で集中したい。
エスカ :
任せてください! 戦闘訓練だってこなしてきましたから!
エリス :
(あたしは<[AC0D0D]支配[FFFFFF]>の力が嫌いだ。いい思い出なんて一個も無い。でも……)
(そういう気持ちが、枷になってる。だから、その枷を消す……)
(あたしはあたしの気持ちさえ<[AC0D0D]支配[FFFFFF]>するんだ!)
この戦場全てを——
——<[AC0D0D]支配[FFFFFF]>する。
(声が聞こえる……これは……魔物たちの声……?)
(苦しんでる……恨んでる。怒ってる……帰りたがってる……?)
うん、そうだね。もう、帰っていいよ。みんなのいるべき場所に……
エピタフ? :
なにしやがった、てめぇ!!
アイシャ :
汝を<[AC0D0D]拒絶[FFFFFF]>する。
エピタフ? :
なっ!
アイシャ :
自決はさせないよ。エリス、そいつを<[AC0D0D]支配[FFFFFF]>しろ。
エリス :
うん!!
エピタフ? :
…………
エリス :
アイシャさん、できたよ。
アイシャ :
私の質問に答えさせてほしい。お前は何者だ?エピタフの関係者か?
098番 :
俺の名前は098番。エピタフ様のしもべ。
アイシャ :
あのポータルを作ったのは君たちかい?
098番 :
ああ、そうだ。
アイシャ :
どうやってあんなものを作った?なにが目的だ?
098番 :
ポータルはエピタフ様が残した記録を元に作った。あの方は万能の天才。神秘の体現者にして我々の[道標:みちしるべ]。
我々はあの方の手足となるために作られた被造物。だが、シャッテンシュピールにはなれなかった出来損ない。
シャッテンシュピールもエピタフ様も消えた今、我々があの方の目的を引き継がねばならない。
アイシャ :
その目的とは?
098番 :
世界を憎むこと。憎しみを[拡:ひろ]げること。我々はそのために作られた。
嘆きと怒り。喪失と破壊。戦争と殺戮。それを我々は拡げていく。
この世の全ての者が、この世界を憎むように……
銀の諸島での計画もその一環だ。革命という名の闘争が拡がってくれて、とても嬉しかったよ。
ザック :
ふざけるな!そんなもんのために俺たちの国は巻き込まれたっていうのかよ!?
098番 :
ああ、そうだよ。愚かな王をそそのかし、愚かな民をそそのかし、憎しみが拡がるようにした。
エピタフ様がいらっしゃる時にこのフィナーレをお見せできなかったことが悔やまれる……
ザック :
てめぇぇっ!
こいつらのせいで……俺の父ちゃんも母ちゃんも……こいつらのせいで!
098番 :
いや、違う。我々は後押ししただけだ。決断し、行動したのはこの国の王であり、貴族であり、君たちだ。
我々はエピタフ様と違って万能ではない。せいぜい演出に手を入れる程度のことしかできなかった。
よって、君の両親を殺したのは民を虫けらのようにしか思っていない愚かな王だ。
ザック :
っ!
アイシャ :
ザック!!
ザック :
わかってる!!
…………
……ボスを助けに行く。
:
5
王国軍兵士 :
投降スル。
これ以上は争ワナイ。
国民 :
俺たちモ戦いはしない。
牢獄に捕えられたナカマを釈放スル。
エリス :
…………
リアム :
なにシケたツラしてんだよ?
エリス :
ちゃんリア……
リアム :
その呼び方やめろ。つーか、お前の力で戦いが止まったんだぞ。なに、へこんでんだよ?
エリス :
……だって、こんな力、異常だもん。
リアム :
…………
エリス :
人の意思とか思いも全部無視してあたしに<[AC0D0D]支配[FFFFFF]>されるなんて……
リアム :
たしかにおっかねー力だけどな、どう使うか次第だろ?
少なくとも今回の使い方は正しかったと思うぞ?平民も革命軍も、それこそ王国軍の被害も少なく済んだ。
エリス :
……あたしが間違ったらどうするの?
リアム :
知らねーよ。俺はお前じゃないからな。そういう相談はてめーの仲間にでもしとけ。
エスカ :
先輩!
エリス :
……そうだね。うん。あたしには仲間がいるもんね。
エスカちゃん!サイファーたち、助けに行こう!
エスカ :
はい!
リアム :
お守りは大変だぜ……
アイシャ :
傭兵にしておくにはもったいない面倒見の良さだね。
リアム :
使えるもんならなんでも使うのが傭兵流だからな。ガキでも使えるならケツを蹴るくらいはするっつーの。
で、そっちはなにかわかったか?
アイシャ :
エピタフがロクでもないことをしていたってことくらいだよ。
リアム :
さすがは世界をぶっ壊した怪人様だな。くたばった後もめんどくせー。
アイシャ :
王家もエピタフの信奉者に誘導され続けていたようだ。それこそ何百年と前からね。
リアム :
連中も被害者だとは言わないよな?
アイシャ :
ああ、言う気は無いよ。易きに流れたのは彼らの意思だ。実際、多くの命が失われていった……
客観的にも主観的にも許していいとは思わない。
だが、この憎しみや怒りの連鎖がエピタフの狙いだとするなら、死んだ後も世界は彼の影響下にあると言っていい。
リアム :
くっだらね……生きてる人間が死人に負けると思ってんのか?
アイシャ :
……そうだね。少し感傷的になっていたようだ。
リアム :
ま、目の前の世界が問題だらけなのは俺も同意だけどよ、そいつら全部解決して伝説になりゃいいだけだろ?
つーか、まだ解決もなにもしてねーしな。途中でへこんでるヒマはねーぞ。
アイシャ :
ああ、そうだね。囚われている人を解放しよう。
ザック :
いねーってどういうことだよ!?
刑務官 :
それは、その……既に移送済みでして……
アイシャ :
なにがあった?
ザック :
ボスがここにいねーんだよ!
エリス :
サイファーもアッシュもいないよ!
ザック :
おい、知ってること全部話せ!
刑務官 :
ひっ! は、話します!
え、エリーナ・グレヴィッチは昨晩のうちに、処刑場に移送済みです。
ザック :
処刑は建国記念日じゃねーのかよ!
刑務官 :
ま、前倒しになったと……
ザック :
そりゃあいつだ!?
刑務官 :
き、今日です。ちょうど、今、刑が執行される時間です。
ザック :
嘘……だろ……?
嘘って言えよっ!!
刑務官 :
ひっ!!
アイシャ :
ザック! 落ち着け!
ザック :
落ち着いてられるかよ!!
アイシャ :
待て、ザック!エリス、君たちもついてこい!
エリス :
でも、サイファーたちが……
エスカ :
ここに捕えられていたはずの偉そうな男性とマスクをかぶっていた男性は知りませんか?
刑務官 :
それはわからない。ただ、エリーナと一緒に処刑される囚人もいたから……
エリス :
連れてかれたってこと!?
エスカ :
私たちも急ぎましょう!!
:
6
エリーナ :
…………
貴族 :
憐れな娘だ……
王にたてつくから……
処刑人 :
それでは、これより謀反人エリーナ・グレヴィッチの処刑を執行いたしマス!
王より一言お願いいたしマス!
フリーセン王 :
ここにいる皆も知ってのとおり、かの娘は貴族でありながら民を焚きつけ王家へと刃を向けた大罪人である。
だが、果たしてエリーナ一人の罪であるのだろうか?
かの娘を焚きつけた貴族もいる。急進派なる連中だ。まあ、かの者たちも我が新たな力[熾零魔獣:ネビュラス]の前に敗れた。
気づいているか?エリーナよ、この場で貴様の処刑を見届ける者たちの中にも急進派がいることを。貴様の両親がいることを!
エリーナ :
まさか……
フリーセン王 :
私が私に楯突いた貴族を許すとでも?殺せ、エピタフ。
処刑人 :
御意に。
盛大な処刑パーティーのはじまりはじまり〜!
貴族の悲鳴 :
ぎゃあああああ!
私は違う!急進派じゃあ!
エリーナ :
アンタはなにがやりたいんだよ!?
フリーセン王 :
私は王だ。全ては私の望むままでなければならない。
[熾零魔獣:ネビュラス]さえあれば、貴族も民も私には逆らえぬ。
エリーナ :
国が荒廃する!
フリーセン王 :
ここまで荒廃させたのは誰だ?私が国を思って[政:まつりごと]をしてもそれを邪魔する者がいる。貴族に愚かな民……いないほうがいい。
エリーナ :
どこまで[暗君:あんくん]なんだ……
フリーセン王 :
エピタフ、その娘を火刑に処せ。
処刑人 :
おおせのママに……
:
エリーナの足元の薪に火がつけられる。
エリーナ :
ぐっ!
(ここまでか〜……)
??? :
諦めるのはまだ早いぜ。
エリーナ :
(炎が薪ごと吹っ飛ばされた!?)
サイファー :
ヒーローは遅れて登場するもんだからな。
フリーセン王 :
なんだ、貴様らは!?
サイファー :
通りすがりの正義の味方ってやつだ。
フリーセン王 :
エピタフ! 殺せっ!
アッシュ :
っ!
処刑人 :
アラアラ……邪魔が入っちゃいましたカ。
エピタフ? :
ギャハハハハハ。
サイファー :
くさい演技してんじゃねぇよ。パチモン。お前が道化師じゃねーことくらいこっちも知ってんだ。
偽エピタフ :
だとしても、この状況をどう覆しマスか?
サイファー :
そんなの簡単だ。悪党とバケモノまとめて倒してハッピーエンドだよ。特等席で拝ませてやるぜ、パチモン。
偽エピタフ :
たった二人でなにができるんデスか?
サイファー :
二人?とりあえず三人だろ。おい、エリーナ・グレヴィッチ!
やれるか?
エリーナ :
当然じゃん。
サイファー :
上等! <[AC0D0D][04:ゼロフォー][FFFFFF]>、やるぞ。
アッシュ :
了解。
サイファー :
レッツロール!ショウタイムのはじまりだ!
:
7
エリーナ :
どうする〜?ジリ貧だけど?
アッシュ :
ああ、戦況はかんばしくない。
サイファー :
無理を通せば道理が引っ込むってな!
<[AC0D0D][04:ゼロフォー][FFFFFF]>、最悪、パッケージアルファを連れて、この場を離脱する。
アッシュ :
……パッケージベータもな。聖王家代表を失うわけにはいかない。
サイファー :
こんなことなら、<[AC0D0D][02:ゼロツー][FFFFFF]>や<[AC0D0D][03:ゼロスリー][FFFFFF]>も召集しときゃあよかった。
アッシュ :
あいつらは、お前の命令を素直に聞かないだろ。
サイファー :
だったら余計にこのミッション、失敗するわけにはいかねぇな!
ぐあっ!
偽エピタフ :
ワタクシもいるんですヨ〜?忘れちゃダメダメェ。
アッシュ :
囲まれたか……
エリーナ :
…………
連中の狙いはアタシだし、アンタら逃げなよ。
サイファー :
諦めるのが早すぎるぜ!
それとも重さに耐えられないか?
革命軍のリーダー。民衆のカリスマ。新進気鋭の起業家。
お前の在り方にこの国の連中はおんぶに抱っこで希望を抱いた。
結果、自分のせいで争いが起きた。重さに耐えられなくなるのは無理も無いさ。
エリーナ :
そんなこと言う資格、アタシには無いっしょ?
サイファー :
別に逃げてもかまわねぇだろ?お前の人生だ。他人の人生まで背負う必要は無い。
エリーナ :
……でも、責任はあるっしょ?アタシの夢に巻き込まれて死んでった人がいる。
……だから、血を流したくなかったんだよ。
サイファー :
…………
エリーナ :
アタシはさ、みんなが好きにオシャレしたり、おいしいもの食べたり、楽しんでる世界が見たかっただけなんだ……
平民も貴族も王家も……みんなが幸せになる未来が見たかっただけなんだ……
こんな惨状!アタシは背負えないよ!!
??? :
一人で背負う必要無いっすよ!!
ザック :
俺たちが一緒に背負います!それが仲間ってもんでしょ!
エリーナ :
みんな……
チタ :
ボスの夢はボスだけの夢じゃないっしょ!
メグ :
メグたんたちみんなだって考えてボスについてきたお!
ラヴィ :
とりま、ボス、メンブレ中だから聞き流すけどさ。ジブンら、信じてくれてないんすか?
ザック :
この革命はボスだけのもんじゃねぇ!俺たちの革命だ!!
エリーナ :
みんな……
そうだね〜……一人でへこんでらんな——
フリーセン王 :
やはり雑草は根切りにすべきだな。
ザック :
ボス!!
ボス! しっかりしてください!ボス!!
エリーナ :
……大丈夫……だから……夢……終わらせ……ないで……
ザック :
ボス! しっかりしてください!ボス!! クソ!ふざけんなよ! ボス!!
エリーナ :
……怒っちゃ……ダメ……それは……なにも……変えられないから……
ザック :
ボス! ダメだ!あんたが死んだら俺たちは!!
アイシャ :
——<[AC0D0D]拒絶[FFFFFF]>する!!
サイファー :
アイシャ!?
エリス :
あたしたちもいるよ!
アイシャ :
まだエリーナ・グレヴィッチは死んではいない!私がどうにか死を<[AC0D0D]拒絶[FFFFFF]>する!!
エリス! [熾零魔獣:ネビュラス]を頼む!
エリス :
うん! でも少し時間かかる!サイファー! アッシュ!
サイファー :
なんだ、<[AC0D0D][01:ゼロワン][FFFFFF]>!
エリス :
時間、稼いで!
アッシュ&サイファー :
了解!
アイシャ :
エスカ、君の神樹の力に癒やしの力はあるかい?
エスカ :
あります!
アイシャ :
治療を手伝ってくれ!
エスカ :
はいっ!
アイシャ :
リアム、敵をエスカや私たちに近づけさせないでくれ!
リアム :
任せな。
ザック :
アイシャ、エスカ、リアム……ボスを頼む。
フリーセン王!!
てめぇだけは許さねぇっ!!
偽エピタフ :
ワタクシを無視しちゃ嫌デスよ?
ザック :
てめぇもまとめてぶっ潰す!
革命軍を舐めんじゃねぇっ!!
:
8
エリス :
——あたしはあなたたちを<[AC0D0D]支配[FFFFFF]>する。
ここはあなたたちのいる場所じゃない。[帰還:かえ]っていいんだよ。
偽エピタフ :
これは!?
サイファー :
残念だったな!こいつで締めだっ!
偽エピタフ :
がっ!エピタフ……様……
アッシュ :
……戦闘終了。
サイファー :
よくやったな、エリス。
エリス :
…………
サイファー :
どうした? シケたツラして。
エリス :
ううん。なんでもない。それより革命軍のリーダーは!?
アイシャ :
(状況は芳しくない。銃弾が急所を撃ち抜いてる……<[AC0D0D]拒絶[FFFFFF]>の概念で出血は抑えているが……)
(<[AC0D0D]拒絶[FFFFFF]>し続ければ現状維持は可能だ。だが、それでは問題の解決にならない……)
エスカ、私の<[AC0D0D]拒絶[FFFFFF]>の概念を止める。そのタイミングで神樹の力を行使できるかい?
エスカ :
やってみます。
<[AC0D0D]知恵者エスカの名において、[地母:ちぼ]の慈愛を[此処:ここ]に示さん。[陽樹:ようじゅ]の脈、生命の[明滅:めいめつ]を[其:そ]の身に宿せ[FFFFFF]>
<[AC0D0D][灼命:しゃくめい]の[樹冠:じゅかん]――イマーア![FFFFFF]>
アイシャ :
ダメだ。まだ弱い!傷が塞がらない……
エスカ :
(お願い、アクティリフィラ!私に力を貸してください……!)
<[AC0D0D]知恵者エスカの名において、我が葉脈の[宿木:やどりぎ]に捧げる——[FFFFFF]>
<[AC0D0D]——[樹幹:じゅかん]に我が身を[供物:くもつ]とする。なれば、[陽樹:ようじゅ]の脈、生命の[明滅:めいめつ]を[其:そ]の身に宿せ[FFFFFF]>
<[AC0D0D][灼命:しゃくめい]の[樹冠:じゅかん]――イマーア![FFFFFF]>
エリーナ :
うっ……
アイシャ :
つながった!治癒魔術を重ねる!
エスカ :
よかった……
エリス :
エスカちゃん!
エスカ :
先輩……私……やれました……
エリス :
うん、さすがはエスカちゃんだよ!
チタ :
ボス!
メグ :
大丈夫だお!?
エリーナ :
……どうにかね〜。まだ死ねないみたい……
ラヴィ :
……マジよかった。
エリーナ :
あれ? ザックは……?
リアム :
あの野郎……まさか……
フリーセン王 :
誰か! 誰かいないのか!叛逆者を打ち取れ!エピタフ! 私を逃がせ!
:
…………
フリーセン王 :
誰か!
??? :
誰も来るわけないだろ。貴族も護衛も何もかも、お前が殺しちまったんだからさ。
フリーセン王 :
ひっ!
ザック :
言ったよな、王様……
お前だけは許さないって。
:
9
フリーセン王 :
待て! わかった!話し合おう!
ザック :
……そう言ってボスを騙しただろ?あの時、俺も一緒にいたんだぞ?もう忘れたか? いや、最初から平民なんて眼中に無いだけか……
フリーセン王 :
なにが欲しい!?金か!? 爵位か!?欲しいモノがあるならなんでもくれてやる!
そうだ! 急進派の貴族も間引いた。いくつか領地も空いている!貴様ら革命軍にくれてやってもいい!
ザック :
俺の父ちゃんはただの職人だった。荒事が嫌いで優しくて……そんな気弱な父ちゃんを母ちゃんがケツ叩いててさ……仲良かったんだぜ?
王に弓引くだとか革命だとかそんなことできる人じゃなかった。だってのによ……
俺たちの未来のために立ち上がった。そして殺されたっ!!
フリーセン王 :
私じゃない!兵がやったことだ!!
ザック :
っ!
フリーセン王 :
悪かった! 謝る!だが、増税は必要だったのだ!貴族がそれを断ったから貴様らから徴収せざるをえなかった!
私は国のためを思っていた!貴族どもとは違う!だから命だけは助けてくれ!
ザック :
俺の母ちゃんは命乞いをするチャンスすら与えられなかった……
ここで死ね! フリーセン王!!
フリーセン王 :
ひぃやぁあっ!
エリーナ :
ザック!!
ザック :
……ボス、止めないでください。こいつだけは生かしておけない……
こいつだけは!
エリーナ :
アンタは一度、アタシを王に売ろうとしたことがあったよね?
革命のために。少しでもマシな未来のためにさ……
ザック :
俺は……
エリーナ :
知ってるよ〜。憎くて憎くてたまらないのに、そんな感情置き去りにしてどうするのが最適か考えちゃうんでしょ?
そういう自分に苦しんでることもさ〜……アタシも一緒だから……
ザック :
……父ちゃんは俺たちの代のために戦って死んだ。母ちゃんは俺を逃がそうとして殺された……
二人を無駄死ににはできない!だから、俺は革命を成す!!
エリーナ :
そいつを殺したら革命は失敗する!
ザック、怒りや憎しみは壊すだけだよ。
ザック :
俺はこいつを許せない……!
エリーナ :
許す必要は無いよ。でも、感情のままに命を奪ったらそいつと同じじゃない?
ザック :
ボスだってこいつに奪われてきただろ!仲間だって!あんたの家族だって!
エリーナ :
そうだね〜。アタシだって憎いよ、そいつが。
だからだよ。だから、ここで命を奪っちゃいけない。
利口なザックならわかるっしょ?王の息のかかった貴族たちは残ってる。
ここでそいつを始末したら内乱は続く。争いは終わらない。
それこそ無駄死にが増える。
ザック :
でも、こいつは……
エリーナ :
一緒に背負ってくれるって言ったっしょ?背負うしかないんだ。憎しみも悲しみもやるせなさも何もかも……
他の人らが背負わなくていいように、アタシらが背負ってくしかないんだよ……
ザック :
っ!
あああああああああっ!
フリーセン王 :
ぐはっ!
エリーナ :
ザック!
ザック :
……殺してないっすよ。
ボスの言うとおり、このクズ、とことんまで利用してやります。
利用して利用して利用しつくして最後は断頭台の上に立たせてやる。
それまでは生かしてやるだけっす。
俺、ボスみたいに感情置き去りにするの得意ですから。
エリーナ :
……そうだね〜。泣いたり怒ったりは革命が終わるまで取っとこうじゃん。
ザック :
じゃあ、さっそく王城を包囲しますか。王家の人間を貴族に使われるのも面白くないっすからね。
エリーナ :
そゆこと〜。とりま、王様使って、平民の政治参加を認めさせないとね〜。
ザック :
貴族連中、ゴタゴタ言ってきますよ?
エリーナ :
貴族は連邦に泣きつくだろ〜ね〜。ま、こっちはこっちで帝国を動かすつもり〜。
ラヴィ :
あ、それなら革命軍に合流したメンバーが連邦や帝国のVIPっぽいっす。
エリーナ :
それマ?超都合いーじゃん♪
チタ :
ちゃんザク……
ザック :
フリーセン王は丁重に扱えよ。絶対に逃がすな。あと、民衆、貴族両方に狙われる。所在地は隠せ。
メグ :
りょだお!
ザック :
俺たちの革命はまだ終わっちゃいない。これからだぜ!!
革命軍 :
ウェーイ!
ザック :
(今はこれで許してくれよ、父ちゃん、母ちゃん……)
(俺たちの子の代のため、孫の代のためにこの国、必ずよくしてみせるからさ……)
:
10
ウェスタロス牢獄の襲撃に端を発した銀の諸島の革命は各地に波及し——
フリーセン王を確保した革命軍は王城を包囲、王家の者たち全ての身柄を拘束した。
王派閥の貴族たちは連邦に助力を頼んだが、世界議会との協調を理由に連邦は動けなかった。
結果、貴族たちは革命軍との争いを避けるように話し合いの席につくことになった——
アイシャ :
市民議会の発足まではこぎつけそうかな?
サイファー :
ま、あとは連中次第だろ。
アイシャ :
君の確保も終わったし、私の仕事は終わったよ。
サイファー :
借りにしとく。いつか返す。
アイシャ :
ところで君はどうやってエリーナを助けたんだい?囚人として君たちも拘束されてただろう?
サイファー :
捕まったフリはな。下手に応援頼んで使えねー奴が来たら困るだろ?
だから俺たちがミスったフリして有能な奴が応援に来るのを待ってたってわけだ。
だから、エリーナが移送された時、俺とアッシュはすでに脱獄済みだ。
アイシャ :
王の暴走で貴族を助けなかったのは?
サイファー :
……間に合わなかったって答えじゃダメか?
アイシャ :
急進派が生き残っていれば、そのまま革命軍を利用していただろう。彼らはパトロンだ。革命軍も無碍にはできない。
だが、貴族にとって都合のいい政治体系になっていただろうね。そうなれば、民衆の反乱はまだ続いていただろう。
私が君の立場でも、きっと間に合わなかったんじゃないかな?
サイファー :
偶然さ。俺たちの実力が足りなかっただけだ。
アイシャ :
そういうことにしておくよ。
エリス :
サイファー!勝手にブラブラしないでよ!
サイファー :
お、なんだ?俺にお茶でも馳走したくなったか?
エリス :
いつまでもお茶くみじゃないし!今回だってあたしとエスカちゃんでサイファー助けたんだからね!
ミスったのはサイファーのほうなんだけど〜?このまま行くとあたしが<[AC0D0D][00:ダブルオー][FFFFFF]>になるんじゃないの〜?
サイファー :
煽るんじゃねーよ。ま、よくやったのは事実だ。
アッシュ :
ああ、<[AC0D0D][01:ゼロワン][FFFFFF]>と<[AC0D0D][09:ゼロナイン][FFFFFF]>の活躍は予想外だった。
エリス :
予想外ってどういうこと!?期待してなかったってこと!?
エスカ :
先輩、落ち着いてください。
エリス :
だって〜……
アイシャ :
君たちは賑やかでいいね。
ザック :
おっと、なんだ、お前ら、こんなところでなにしてんだ?
アイシャ :
そういう君こそ、なにを?
ザック :
市民軍の編成とかしないといけなくてな。貴族連中が話し合いに乗っても油断はできないしよ。
リアム :
つか、いい加減、報酬払えや。
ザック :
金ならねーぜ!!
リアム :
クソが……てめぇらのボスに請求してやる。
お前らももらえるもんはもらっとけよ。
アイシャ :
私はいらないさ。その分をこの国のために使ってくれ。
ザック :
遠慮しねーぞ。お前らの国に負けねーくらいすげー国にしてやるさ。
リアム :
もう行くのか?
アイシャ :
ああ、忙しくてね。それじゃあ、またどこかで……
ザック :
エリス、お前らはどうするんだ?
エリス :
あたしたちも帰るよ。サイファーとアッシュ、助けたし。
いつメンによろしくね!みんな、[好:ハオ]だったよ! って。
ザック :
ああ、伝えとく。
リアム :
おい、時間に遅れるぞ。
ザック :
マジか!? じゃあな。何かあったら言ってくれ!革命軍はお前らの味方だぜ!
エリス :
うん! じゃあね!!
サイファー :
俺たちも帰るか……
アッシュ :
出国の手続きをしてくる。エスカ、手伝え。
エスカ :
はい!
エリス :
ねえ、サイファー……
サイファー :
なんだよ?
エリス :
仲間っていいよね。
サイファー :
そうだな。
エリス :
あたしね、また<[AC0D0D]支配[FFFFFF]>の力、使っちゃったんだ。
サイファー :
…………
エリス :
とても強い力でしょ?だからさ、少し怖いんだ……
あたしが間違ったら、サイファー、止めてくれる?
サイファー :
ああ、安心しな。その時はお前のケツを蹴り上げてやるさ。
エリス :
お尻をキックはダメ!もっと優しい方法で!
サイファー :
めんどくせーな。じゃあ、ハリセンで頭をぶっ叩く。
エリス :
あたし、お笑い芸人じゃないんだけど!
サイファー :
似たようなもんだろ、お茶くみエージェント。
エリス :
もーー!
??? :
うまくやったようだな。
アイシャ :
どうにかね……まさか君たちが出迎えかい?
クエスタ :
……次の任務を伝えに来た。
アイシャ :
どうやら、休暇はまだ先になるみたいだね……
ジュダ :
不服か?
アイシャ :
いいや、不服じゃないさ。休んでる暇なんて私たちには無いよ。
彼が救ったこの世界のために——
——働こう。