1


今回の依頼も無事に終わってよかったね。


ええ、そうね。依頼は終わったわ。それもアッサリ。でもね……


遠いのよ!!


飛行艇に揺られて二日!ようやく着いたと思ったら依頼は半日もかからず終わって!


また二日かけて戻るのよ!もう船室になんていられないわ!


えっと……ほら見て、キャトラ。下にヴェルデ島が見えるから、あと少しだよ。


ごめんね、アイリス。わかってるのよ……あと少しよね……あと少し……


なに!? なんなの!?


キャトラ! こっちに――


きゃあああ!!


ぎにゃああーーー!!!


アイリス! キャトラ!だめだ、届かな――


……………………


…………


おわっ!? 何が起きたんだ?


…………


ちょっと[0F7319]葉[FFFFFF]。ここどこなのよ?


えぇ!?オイラに聞かれてもわかんねぇよ。


だったら調べて来なさいよ。


いやしかし――


さっさと調べてらっしゃい。


うい。


葉殿ーー!!


[0F7319]阿弥陀丸[FFFFFF]!! どこ行ってたんだ?


ここがどこか、調べようと思ったでござるが……


それで? なんかわかったか?


申し訳ない葉殿!!拙者にも全く知らぬ場所としかわからず……


それでのこのこ帰って来たわけ?


いや! [0F7319]アンナ[FFFFFF]殿!!あちらで少年が倒れていたでござるよ!


なんだって!?


ここがどこで、何が起きてるのかもわからない。


あたしたちもそれなりに厄介な状況なのだけど?


だからそいつから、何か聞けるかもしれないだろ?


……はぁ。わかったわ。


よし! 阿弥陀丸、案内してくれ!


承知!! こちらにござる!


なんだ、こいつら!?


さあね。でも黙って通してはくれないみたいよ。


仕方ねえ。やるぞ! 阿弥陀丸!!


もちろんでござる!!!


2


葉殿! あそこでござる!!


おい大丈夫か?


そっか。よかった。でも、なんでこんなところで倒れてたんだ?


……たしか飛行艇が爆発して、甲板から振り落とされて……


なんと!? よく無事でござったな。


あれ? 阿弥陀丸が見えるのか?


ウェッヘッヘッ。そっか。


あ、自己紹介がまだだったな。オイラは麻倉 葉。


そんで、阿弥陀丸はオイラの持霊だ。


ああ。オイラ、シャーマンなんよ。


えっと。シャーマンってのはな、あの世とこの世を結ぶ者でな。霊の力を借りられるんよ。


こうやって――


[O・S:オーバーソウル]スピリット オブ ソード[白鵠:びゃっこう]


ふう。やっぱ見せるためにするようなもんじゃないな、コレ。


ちょっと葉! 何かわかったの?


アンナ!?いや、まだ……そういや、名前も聞いてなかったな……


<HERO_NAME>は自己紹介をした。


そう。あたしは恐山アンナ。未来のシャーマンキングの妻になる女よ。


それで? ここはどこなのかしら?


たしか……アイリスがヴェルデ島と……


ヴェルデ島? 聞いたことないわね。


口寄せしても、霊の一人も現れないし。どうなってんのかしら?


アイリスとキャトラは!?


おお?オイラたちが見つけた時には、お前一人だったぞ。


左様にござる。


探しに行かないと!


まあちょっと待てよ。一人で行くのは危ねえって。変な生き物もいるし。


なあアンナ。<HERO_NAME>のこと手伝ってやってもいいか?


そんな暇あると思ってるの?あたしたちの状況も結構まずいと思うのだけど?


いや。その二人からも話聞けたほうがいいだろ?


それに、霊の視える奴に悪い奴はいねえからな。助けてやりたいんよ。


……はあ。しょうがないわね。


ありがとう!


ウェッヘッヘッ。いいって。ほら行こうぜ!


3


葉とアンナが<HERO_NAME>と出会っていたその頃――


はああ!? どこだよ、ここ!?


うるさい! 喚くな、[0F7319]ホロホロ[FFFFFF]。


なんだよ、[0F7319]蓮[FFFFFF]!じゃあ、おめェはここがどこかわかってんのか!?


知らん。


なんでおめェはそんなに落ち着いてんだよ!!


騒いでも何も解決せんからだ。


でもよぉ。葉たちは、他のみんなはどこ行った――ん?


なんだ?


いや、あそこ……誰か倒れてねえか?


なに?


行ってみようぜ!!


おい! 待て、ホロホロ!!


おい、大丈夫――か?!


なんだ!? どうしたホロホロ?


か……かわいい……


言ってる場合か!!


なんだ、こいつらは?


わかんねえけど、この子は守んなきゃだぜ!


[0F7319]馬孫[FFFFFF]!!


はい! ぼっちゃま!!


行くぜ、[0F7319]コロロ[FFFFFF]!!


クル!


4


マジで何だったんだ? あいつら?


オレが知る訳ないだろう。あんな生き物は見たこともない。


う……うぅ……ん……


お? 気が付いたか?


えっと……ここは?それにあなたたちは?


俺はホロホロ。よろしくな!大丈夫か? 怪我してねえか?


あ、はい……大丈夫です。私はアイリスです。


オレは[道 蓮:タオ レン]。貴様に聞きたいことがある。


おいおいおいおい!!もっと聞き方ってもんがあるだろう!?


えーっと、アイリス……さん?ここがどこだかわかりますか?


アイリス、で大丈夫ですよ。ここは……多分、ヴェルデ島……だと思います。


ヴェルデ島? 蓮、知ってるか?


いや。知らんな。


うーん……ところで、アイリス?何でこんなところで倒れてたんだ?


えっと……それは……乗っていた飛行艇が爆発を起こして……


甲板にいた私たちは……


そうだ!<HERO_NAME>とキャトラ!赤い髪の少年と白い子猫を見ませんでしたか?!


いや。俺たちが見つけたのはアイリス一人だけど。


そんな……!二人を探さないと!!


その二人はアイリスにとって大事な仲間なんだな?


はい。それに、キャトラは子猫なんです。早く見つけてあげないと……


魔物に襲われてたりしたら……


わかった! 俺たちも手伝う!構わねえよな、蓮?


……蓮?


(ヴェルデ島?オレが知らないだけか?だがあの生き物は何だったのだ?)


(この女は魔物と言ったな。霊や誰かの持霊ではなかったようだが……)


(もしやここは……)


おい! 蓮! 聞いてんのかよ!?


ああ。いいだろう。


へ?


何だ? その女を手伝うのだろう?


お、おう。いや、そうなんだけどよ……


今必要なのは情報だ。オレたちだけで動き回るよりは効率がいい。


アイリスと言ったか。手は貸してやる。だが、貴様にも協力してもらうぞ。


もちろんです。お二人とも、ありがとうございます。


5


葉たちが<HERO_NAME>と、蓮たちがアイリスと出会うよりも少し前――


ぎにゃあああああーーー!!!


落ちてるー!! アイリスーー!!<HERO_NAME>ーー!!


そんな!! アタシひとりでどうしろってゆーのよ!!


はっ!? アタシはネコ!高いところからでも華麗に着地して……!


って高いにも限度があるのよ!!


ぎにゃああーー!! 


あ……あれ?


随分と空が賑やかだと思えば、猫が降ってくるとはね。


なにこれ!?


これは[0F7319]スピリット オブ ファイア[FFFFFF]。僕の持霊さ。


持霊? なんかわかんないけど、ごめんしたわね。びっくりしちゃって。


アンタが助けてくれたのよね?ありがと。アタシはキャトラよ。


僕は[0F7319]ハオ[FFFFFF]。ところでキャトラ、聞いてもいいかな?


なーに?


キャトラはなぜ喋れるんだい?


ああ、それね……よく聞かれるわ。


それはね、アタシが喋りたいからよ!!


嘘ではなさそうだね。


嘘ついてどうすんのよ?


ははは。誰かの持霊や[O・S:オーバーソウル]という訳でもなさそうだ。精霊か何かかな?


オーバーソウル?それは知らないけど、精霊なら知り合いにいるわ。アタシは違うわよ。


なるほどね。


ハオはここでなにしてたの?


僕にもわからないんだ。気づいたらここにいたからね。


ふむ。持霊やらオーバーソウルやらよくわからないこと言ってるし、気づいたらここにいたって……


ハオ。アンタって、もしかして違う世界からのお客さんなのかしら?


キャトラもそう思うかい?


それにしてはあまり驚いてないみたいだね。


アタシはね、慣れてるのよ!!


アタシに任せときなさいな!と言いたいところなのだけども……


どうかしたのかい?


ほら、アタシ空から落ちてきてたじゃない?


乗ってた飛行艇で急に爆発があってね。甲板にいたもんだから落ちちゃったのよ。


その時、アイリスと<HERO_NAME>の二人と散り散りになっちゃって……


心配して探してるだろうし、怪我してるなら助けなきゃ。


わかった。手伝ってあげるよ。


いいの!?


フフ……どうも僕は、猫とは縁があるようだからね。


6


<HERO_NAME>!!


葉とアンナじゃねえか!!


呼び捨てにしないで。


ホロホロー!!


貴様らだけか? 他の者は?


あたしたち二人だけよ。


とにかく二人も無事で良かったよ。


ねえ、<HERO_NAME>。キャトラは? 一緒じゃないの?


そんな! 急いで探さないと!!


ちょっと待ちなさい。


探すったって当てはあるの?当ても無いのに探し続けるなんて無謀よ。


おい、アンナ……


なんだよ!じゃあ諦めろってのか!?魔物だっているんだ!子猫1匹じゃ危ねえだろうが!!


だからだ。バカモノ。


なにがだよ!!


どことも知れん異世界で、当ても無く猫1匹探すのは危険だと言っている。


は? ……異世界?なに言ってんだ、おめェ。


なんだ。気付いてたのね。


当然だ。


え!? アンナまで?


あんたがアイリスよね?この世界では死んだらどうなるか、教えてもらえるかしら?


え? はい。死者はソウルとなって大地に還ると言われています。


……そう。ありがと。


どういうことだ?


要するに、あの世ってものが存在しないのよ。


道理で口寄せしても、誰も呼び出せない訳よね。


じゃあ、ホントに異世界なんか?


そう言ってるでしょ。


でも! だからって見捨てるのは違うだろ!!


誰が見捨てるなどと言った?


へ?


無闇に捜索を続けるなと言っているのだ。バカめ。


あんたたちもそれでいいかしら?<HERO_NAME>の話じゃ、この島に詳しい訳ではないんでしょう?


はい。すみません。気が焦ってしまって……


いいのよ。それだけ心配なんでしょ。


なあ、この島に人の集まりそうな場所ってあるか?


空から見た時に、街があったように思いますけど……


よし! まずはそこから探すか!


7


なあ? あそこに見えるのって街じゃねぇか?


おお。街だな。多分。


やっぱ目的地が見えると気分も違うな!


危ねえっ! ホロホロ!!


おわっ!! なんだよ、こりゃ!!


この炎は……


おい……嘘だろ……なんでおめェがここにいんだよ!!


ハオ!!


貴様もこの世界に来ていたというのか。


あの人は一体?


あれはハオ。葉の……敵よ。


なあハオ。ここって異世界らしいんよ。オイラたちがここで戦う――


おわっ!!


どうやら話をする気は無いらしいな。


あれは!? まさか……飛行艇を襲ったのは……!?


どういうこと?


私たちの乗っていた飛行艇は突然爆発しました。その時の爆発に似てるんです。


黙って通してくれる感じじゃねぇな。


葉。貴様も覚悟を決めろ。


やるぞ、馬孫!!


[武神:ブシン] [魚翅:ユーツー]


コロロ!!


ックル!


[O・S:オーバーソウル]!!! ニポポテクンペ


ここでやられる訳にもいかんしなあ……


葉殿!!


行くぞ。阿弥陀丸。


[O・S:オーバーソウル]スピリット オブ ソード[白鵠:びゃっこう]


私たちも一緒に戦います!


みんな! 気を付けろよ!


8


うあああぁあぁあぁ!!!


やっぱ……強えな……


泣き言を言ってる場合か!馬孫!!


ぼっちゃま!もうおやめ下さい!!


これ以上[O・S:オーバーソウル]が破壊されたら、おめェの巫力が尽きちまうだろ。


貴様とて似たようなものだろうが。


もうちょっとなんとかなると思ったんだけどな……


ちっちぇえな。


ハオ!?


どういうことだ!?


なんでハオが二人もいるんだよ!?


お前は何だ?どうして僕の姿をしている?


へえ。面白いね。僕とやろうってのかい?


フン。気に入らないな。


9


危ないところだったね。


貴様、どういうつもりだ。


おいおい。助けてもらっておいてその態度はないんじゃないか?


ふざけんな!助けてくれてありがとうとでも言うと思ってんのかよ!?


いや。それは言っていいんじゃないか?実際助けられてるしよ。


とにかく二人ともやめとけって。


そうね。あんたたち、もう巫力残ってないでしょ。


けどよ!!


おーーい!! ハオーー!!もう終わったー?


キャトラ!?


あら! アイリスに<HERO_NAME>じゃない!!


二人とも無事だったのね!


う……うん。キャトラこそ大丈夫?怪我してない?


アタシは大丈夫よ!ハオが助けてくれたの!


え!? あの、ハオさん。ありがとうございます。キャトラがお世話になったみたいで。


ははは。構わないよ。キャトラと会ったのも偶然だったし、ここまで楽しかったからね。


ハオったらすっごい強いのよ!魔物なんかバッタバタやっつけちゃうんだから!


それで? そっちの4人はどなた?


どうする? まだやる気か?


フン。やる気も失せたわ。


だな。


オイラは麻倉 葉。こいつらは蓮とホロホロだ。


恐山アンナよ。よろしくね、猫ちゃん。


アタシはキャトラよ! 


わかったわ。キャトラ。


さて。キャトラの仲間も見つかったし、僕は失礼するよ。


え!? 行っちゃうの?


ハオと葉たちって知り合いなんでしょ?一緒にいればいいじゃない?


そうだな。葉とアンナにこんなところで死なれても困ってしまうし、僕は構わないよ。


だが、歓迎されてはいないようだけどね。


オイラは構わんよ。


葉!?


聞きたいこともあるしな。


貴様、何を考えている?


大丈夫。なんとかなるって。


フン! 俺は信用せんぞ!


葉がいいなら、あたしもいいわ。


なら、一緒に行こうか。


よーし!……どこを目指すのかしら?


えっと……街かな。


それじゃ、街に向けてしゅっぱーつ!!


10


ハオ。一つ聞いていいか?


どうした、葉?


あいつは何なんだ?あの姿はお前そっくりだったが?


さあ?


さあって……


実際、僕にもわからないのさ。


気付けば異世界にいて、お前たちもいた。そしてお前たちを襲っていた奴が、僕の姿をしていた。


わかるのはそれだけだよ。


ただ、奴の攻撃には怒りと憎しみが込められていた。


それにあの容姿だ。もしかしたら、あれも僕なのかもね。


どういうことだ……?


放っておけば、あれは人を滅ぼすために暴れまわるかもしれないということさ。


意思の疎通をしなかったところを見ると、無差別に襲うだろうね。


じゃあ、あいつは何で逃げたんだ?


僕と戦えばただでは済まないと感じたんじゃないか?


でもよぉ、あんなのとどう戦うんだ?下手すりゃおめェより……


僕より、何だって?


貴様よりも強いかもしれんということだ。


ほう。安い挑発だな。乗ってやろうか?


ああ。貴様に勝てれば、あれにも勝てるだろう。


やめろって、蓮。


葉! 貴様、なぜこの男が信用できる!?


オイラたちの目的はシャーマンキングになることだろ?


元の世界に戻らなきゃ、どうにもなんねえ。


それはハオだって同じだ。


裏切られたらどうするつもりだ!


うーん……多分大丈夫だと思うぞ。


オイラたちがもっと強くなんなきゃならんのも事実だけどな。


ま、なんとかなるさ。


……フン。勝手にしろ。


やれやれ。質問は終わりかな?


ああ。すまんかったな。


おーい!もうすぐ街に着くわよ!早く早くー!!


11


風呂だーー!!おお!! スゲー!!露天!?


いや、これ絵だな。にしても本当に外にいるみてえだ。


桜は……造花か?なぜここまでする必要がある!?


女湯もこんななのか?


そうよ。


アンナ!?


未来のふんばり温泉旅館のためにしっかりと見ておきなさい。


お、おう……


しかし異世界でもこんなデッカい風呂に入れるとは思ってなかったぜ!!


なあ、<HERO_NAME>。この世界にも温泉ってあるのか?


へえ〜、温泉で島興しした島か。面白そうだな。


アイリスに聞いたんだけどよ。この世界ってとにかく島がいっぱいあんだろ?


フキ畑が一面に広がってる島とかもあったりすんのか?


ある!?多分でも何でもいいんだよ!!


行ってみてえなー!!


無数の島があるとして、移動はどうしているのだ?


そういえば貴様たちは、乗っていた飛行艇が攻撃を受けた、と言っていたな。


移動はその飛行艇が使われているのか?


飛行艇か船か。船でのんびり旅するってのもいいな。


は!? 飛行島?って島が空飛ぶのか!?


この世界じゃ空飛ぶ島も普通なのか?


へー。この世界でも珍しいんか。


ウェッヘッヘッ。行ってみてえなあ。


そいつは面白そうだな。


ハオ!? おめェも入んのかよ!?


一緒に街に来て、同じ宿にいるのに、風呂に入ってはいけないとでも?


いや、そうじゃねえけど。なんかあれだろ! なあ、蓮!!


なぜオレに振る!!


街に着く前、おめェが一番突っかかってただろうが!!


お、おい。二人ともその辺にしとけって。


だいたい貴様が――!!


うるさい!!!


……はい、すみません……


12


ちょっといいかしら?


はい。なんでしょう?


あのお風呂はなんなの?


あれは……ですね。当旅館の旦那様がアオイの島の温泉を大層お気に入りになりまして。


当館にも作ると意気込んだんですが、露天風呂を作る土地が無く……室内風呂を改造したんですよ。


一瞬外にいるのかと思っちゃうわよね、あれ。


桜の造花も見事でした。


お掃除大変なんですよ、あの桜。


情熱の賜物なのね。ふんばり温泉でも参考にさせてもらうわ。


その情熱はもっと他に向けたらと思うけどね……


オレからも少し聞きたいことがある。


なんでしょう?


最近、街で変わったことはなかったか?


そうですね……街ではないですが、森の向こうの社で火事があったみたいです。


社?


はい。なんでもその社には[AC0D0D]宿怨のルーン[FFFFFF]が奉られてたって。


宿怨の……ルーン?


私も聞いた話なんですが。その昔、ある男が突然人々を襲う事件があったそうです。


捕まったその男はあるルーンを持っていたそうなんですが……


その後も凄惨な事件が起こる度に、犯人が同じルーンを持っていたとかで。


いつしかそのルーンは宿怨のルーンと呼ばれるようになったそうです。


不吉に思った人々は社を建て、そのルーンを奉ったんだとか。今でも行ってる人いるのかしら?


祟り神みたいなものね。


私も営繕のロクさんから聞いただけだから、本当のところはわかりませんけどね。


ありがと。助かったわ。


それでは失礼します。


ところでさ、そのルーンてのは何なんだ?


ルーンは特殊な力を持つ魔法の石で、効果は様々なんです。


便利なものが多いんだけど、中には悪いことを起こすものもあるのよねぇ……


そのルーンとやらを手にした者が人々を襲う、か。


怨霊でも取り憑いてるのかしらね。


でも、それだとハオの姿になるのは変じゃないか?


ルーンを手にした誰かではないとすると……


ルーンが化け物を生む、そんなことがあるのか?


ない……とは言い切れませんね。


なるほど。宿怨のルーンか。


そのルーンが生んだというなら、僕の姿をしていたのも道理かもしれないね。


どういうこと?


この男も憎んでるのよ。人を滅ぼしたいと思うくらいにね。


ちょっとー! ダメよ!!そんなことしちゃ!!


ははは。それは困ったな。


いーい?キャトラさんとの約束よ!!


わかったよ。……少なくともこの世界ではね。


ぐぬぬ……どの世界でだってダメなんだけども。アタシが言ってもどうにもならないのよね……


葉!アンタたちでなんとかするのよ!


ああ。オイラもそのつもりだ。


でもよ。今は目の前のことだろ。


そのルーンが生んだ化け物なのか、わかんねえけど。もう一人のハオもめちゃくちゃ強かったぞ?


確かにな。今のオレたちでは結果は変わらんだろう。


あいつとどう戦う、か……


おいおい。僕がいるのに何を考える必要がある?


え!?


あいつは僕が押さえ込んでやる。


まじか!?


13


さあ!ハオのニセモノを探すわよー!!


探すったって、どこ探しゃいいんだ?


仲居の話にあった社から探してみるか。


口寄せが出来れば、すぐに見つかるのに。


ハオ。何かわかるか?


さあ?


まあ、放っておけばあっちから街を襲いに来るだろうね。


ダメよ! そんなの!!街が襲われる前に見つけるわよ!!


馬孫! 辺りの捜索だ!だが、あまり離れすぎるなよ!


はっ! ぼっちゃま。承知しました!


阿弥陀丸。お前もお願いできるか?


承知!!


一緒に戦うときは、オーバーソウルってのですっごく強くなるし。


空から何か探したり、偵察だってしてくれるのね。


すごいじゃない!アンタたちの持霊って!


ああ。オイラはいっつも阿弥陀丸に助けてもらってる。


オイラにとって阿弥陀丸は、大事な友達なんよ。


しかし、奴がもうこの島を離れている可能性はないのか?


それはないだろうね。


なんでわかんだよ?


僕ならそうはしないから、かな。


どういうことだ?


奴は僕の存在を認識した。自分より強いかもしれない相手がいるなら逃げるようなことはしないさ。


そうか? 逃げられるんなら逃げりゃいいと思うけどな。


おめェだって逃げねえだろ。


そりゃオイラは逃げる訳にはいかんからよ。


葉殿ーー!!


阿弥陀丸!? 早いな!!


あの森を抜けた先に、焼け落ちた社がありました。


あの森、そう深くないでござるよ。


ですが、あまり人の通った跡が見られませんでしたな。


そうか。


騒ぎになってないし、社の存在自体忘れられてたのかもね。


とりあえずそこまで行ってみるか。


よーし!気合い入れていくわよー!!


ウェッヘッヘッ。キャトラは元気だな。


ちょっとー!アンタも気合い入れんのよ!!


見つける前から気合い入れてたら疲れるだけだぞ。


楽に行こう。


だからー!!


これでいいのよ。


葉はいつだって、今目の前にあることをゆるやかに受け入れ乗り越えていく。


だから葉は強いし、かっこいいのよ。


ま、いつも通りだよな。


ギニャーーー!!出発くらいは気合い入れたっていいでしょ!


ま、なんとかなるって。


14


あんた、なんであたしたちに協力するの?


フフ。キャトラに頼まれたからさ。


真面目に聞いてるんだけど。


巫山戯てるつもりはないんだけどね。


オイラも聞きてえな。お前なら一人でもなんとかなるんじゃないか?


前にも言っただろう?


葉。お前にはこんなところで死なれちゃ困るんだよ。


お前は僕の半身だ。


僕がシャーマンキングになる時、その場所にはお前もいなくてはならない。


それに、お前にはまだまだ強くなってもらわないといけないしね。


僕が最強になるためにも。


葉がまだまだ強くならなきゃいけないのには同意するわ。


でもシャーマンキングになるのは葉よ。


ハハハ。僕に勝つつもりなのかい?


ええ。あたしは何があっても葉をシャーマンキングにするつもりよ。


更なる地獄の特訓も考えておくから。


え〜〜……


何よ? 文句あるの?


いえ! ありません!!


どれだけ葉が強くなるのか。楽しみにさせてもらうよ、アンナ。


いきなり幻の左!?


呼び捨てにしないでって言ってるでしょ。


フフ。やっぱり君は僕のお嫁さんになるべき女だよ。アンナ。


そうそう。もう一つあった。


何がだ?


お前たちに協力する理由さ。


気に入らないんだよ。僕の姿をしているのが。


最強はこの僕。未来王ハオ一人でいい。


シャーマンキングになるのもね。


いいや。シャーマンキングになるのはオイラさ。


でねえと、アンナが怖えし……


ハハハ。それはどうかな?お前が強くなることも含めて期待しているよ。


15


僕を待っていたとでも言うつもりか?


ちっ!


へえ。なかなかやるじゃないか。これは本気を出しても良さそうだな。


甲縛式[O・S:オーバーソウル]スピリット オブ ファイア[黒雛:くろびな]


何を呆けている。お前たちの出番だ。


あの街を守りたいんだろう?


お前たちが何もしないなら、この島ごとあいつを焼き尽くすぞ。


そんなのダメに決まってんでしょ!


ハオばっかりに戦わせてないで、アタシたちもやるわよ!


当然だ!俺たちは見物に来たのではないのだからな!


ああ。ビビってる場合じゃねえ!


やるぜ! コロロ!!


クル!!


[O・S:オーバーソウル] ニポポテクンペ


馬孫!!


はっ!!


[O・S:オーバーソウル] [武神:ブシン] [魚翅:ユーツー]


ハオと戦う予行演習には丁度良かろう。


だな。阿弥陀丸!!


[O・S:オーバーソウル]スピリット オブ ソード[白鵠:びゃっこう]


<HERO_NAME>、私たちも!


仕方ないわね。出でよ、式神!


行くぞ! みんな!!


16


逃げられると思っているのか?


鬼火


葉。


わかった。


阿弥陀流 [無無明亦無:むむみょうやくむ]


ふ〜。終わったな。


この禍々しいソウルは……ルーンがまた!?


どうすんだよ? これ!!


私が浄化を――


その必要はない。


お前たちの怒りと憎しみ。理解は出来る。だが僕の姿になったのは間違いだったな。


でもよ、壊しちまって良かったのか? 


どうかしらね? でも、これで宿怨のルーンが原因の事件はもう起きないと思うわよ。


……そうですね。奉られていた理由は凄惨な事件が続いたからという話でしたし……


まあ、そうね!これで良かったのかもね!


怒りや憎しみを抱えちまうのは仕方ねえかもしれねえけど。


それに縛られるのは、楽しくねえもんな。


楽に生きてえもんだ。


アンタが言うと、ユルすぎて違う意味に聞こえるのよねえ……


17


さあ、まずは風呂入ろうぜ!!


その前に一ついいかしら?


どうした、アンナ?


ハオの偽物は片付いたわ。島も無事だった。いいことじゃない。


おう! そうだぜ!!


で? あたしたちはどうやって帰るのかしら?


…………


…………


そうじゃねえか!ここ異世界だった!!


そういやオイラたちなんで異世界に来ちまってんだ?


今更そんなことを言ってるのか、貴様ら?


なんだよ? じゃあおめェには当てがあんのかよ?


ない。


だったらおめェも落ち着いてる場合じゃねえだろ!?


だが貴様には何か考えがあるのだろう? ハオ。


そうなんか?


そうだね。そこは僕に任せてくれていい。


ホントに信用していいのか?俺たちだけこの世界に残していったりするんじゃねえだろうな?


葉とアンナには元の世界に戻ってもらわないと僕も困るからね。


だが、お前は置いていってやろうか?


……すみませんでした……


まあ、そこは大丈夫だと思うぞ。


なんでだよ?


なんたってまだシャーマンファイトは終わってねえからな。


それにハオはオイラたちが強くなることを望んでる。だろ?


フフ。そうだね。だが、僕に勝てると思っているのか?


ああ。勝つさ。シャーマンキングになるのは、オイラだ。


フン。笑わせるな。シャーマンキングになるのは、このオレだ。


俺だって!!一面のフキ畑を、夢を諦める訳には行かねえんだ!!


……ねえ?みんなもう帰っちゃうの?


ん? それはハオ次第なんだが……


たしかに、お前らの言ってた飛行島ってのにも行ってみてえな。


どう? すぐ帰りたい?せっかくだからアンタたちを飛行島に招待したいのだけれども……


ハハハ。やっぱり僕は猫と縁があるみたいだ。別に構わないよ。


そうね。いいんじゃない?


アンナ!


目の前でハオの力を見て、その強さも分かったでしょうし。


飛行島とやらで地獄の特訓といきましょ。


えーー……


はっはっ! 大変だな、葉!!


何言ってんの。あんたたちもやるのよ。


はあ!? なんでだよ!?


付き合ってられるか。


いいの? 葉にはしっかり強くなってもらうけど、あんたたちはそのままで。


オイラは確定なのか……


きっとアンナさんも適度にお休みをくれますよ。


さあ? それはどうかしらね?


そうだ。もっと強くなれ、葉。僕のために。